研究課題/領域番号 |
24500621
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
田辺 茂雄 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (50398632)
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キーワード | リハビリテーション工学 / 生体計測 / 動作解析 |
研究概要 |
平成25年度は,平成24年度の研究において健常者で実現可能性を検討し,良好な結果を得た下肢位置座標推定手法を脳卒中片麻痺患者で検討した.健常者では0.5km/h から5.0km/h までの歩行速度で実施したが,患者においては臨床での有用性を確認するため,被験者の快適歩行速度(0.9km/hから2.7km/h)と0.5km/hから3.5km/hまでで安全に歩行可能な範囲で実施した.提案法はレーザ測域センサによって計測した下腿運動軌跡から足部接地,足部離地を推定するが,これらの推定値から算出した時間距離因子について従来法である三次元動作解析装置から得られた真値と比較した.その結果,遊脚時間の相関は0.61とやや強い相関がある程度にとどまったもの,立脚時間,両脚支持時間はそれぞれ0.97,0.93と非常に強い相関を認めた,ストライド時間および距離,一歩時間および距離についても同様に,それぞれ0.97,0.95,0.95,0.89とすべての指標において非常に強い相関を認めた.提案法は簡便に実施可能であり,特別な計測法を習得する必要もないため,臨床で広く用いることが可能である.加えて,ほぼリアルタイムで歩行能力を評価できるため,患者の歩行能力を随時評価し,常に最適な歩行練習を提供できる.治療効果の向上に伴う患者の入院期間短縮等にも寄与できると考えられ,社会への貢献は大きい. 加えて,歩行に自動的に同調するトレッドミル制御手法についても予備的検討を開始した.3軸加速度,3軸角速度,3軸地磁気が計測可能な9軸モーションセンサを体幹部に貼付する手法,レーザ測域センサを体幹部の高さに照射する手法を検討し,どちらもほぼリアルタイムで体幹位置を計測することが可能であった.平成26年度の研究においては,必要な情報をより精度良く計測できる手法を採用する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,安価で簡便に設置できる二次元放射状スキャンレーザ測域センサを使用して,実時間で両下肢の位置座標を計測する手法を確立し,トレッドミルの自動速度制御および歩行能力評価への応用を検討することである.研究全体での具体的な目標は以下の5項目である. ①レーザで得られた座標から実際の足部位置を推定する手法を考案する.②健常歩行において,歩行能力評価指標が提案法で算出可能であるか明らかにする.③健常歩行に自動的に同調するトレッドミル制御手法を考案する.④模擬患者歩行において,歩行能力評価指標が提案法で算出可能であるか明らかにする.⑤模擬患者歩行に自動的に同調するトレッドミル制御手法を考案する. 平成24年度の研究実施計画では,①および②について実施予定であったが,どちらも予定通り完了した.平成25年度の研究実施計画では,③の予備的検討および④について実施予定であったが,どちらもほぼ予定通り完了した.③については,2種類の計測センサで歩行者の位置計測を行い,どちらもほぼリアルタイムでの計測が可能であった.④については,②の結果が良好であったことから,脳卒中片麻痺患者で計測を行った.その結果,臨床での歩行能力評価として広く用いられている各時間距離因子において,真値と非常に高い相関を認めた.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究においては,歩行に自動的に同調するトレッドミル制御手法について,まず健常歩行における速度制御を検討する.基本的な制御としては,歩行者がトレッドミルベルト上の前方に位置した場合はベルトを加速させ,後方に位置した場合には減速させる.歩行者の位置計測には9軸モーションセンサを体幹部に貼付する手法,レーザ測域センサを体幹部の高さに照射する手法を中心に検討し,必要な情報をより精度良く計測できる手法を採用する.速度制御には歩行速度および歩行者の歩容も影響すると考えられるため,ベルト速度および歩行率(単位時間当たりの歩数)を変化させた際の同調性も検討する.その後,脳卒中患者を模した模擬患者歩行を行い,その同調性を検討する.過去の報告によると,脳卒中患者の歩行速度は1-3km/hであり,立脚時間,遊脚時間等の時間因子は歩行速度によって変化する.この報告を基に各歩行速度の時間因子を算出し,トレッドミルの前方に設置したスクリーンまたは大型モニタなどに両下肢が取るべき歩行周期を提示した状態で,被験者はそれに併せて歩行を行う.対象については,今回の研究に関するインフォームド・コンセントが得られる健常者10名程度を,研究実施機関などで研究内容を掲示して募る.その際に,研究への参加・不参加は個人の自由であり,個人の意思に基づくものであること,研究に不参加または中止の時も何ら不利益を得ることはないことを十分に説明する.また,すべての実験は倫理委員会承認後に行う.
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