研究課題/領域番号 |
24500623
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
塚田 敦史 名城大学, 理工学部, 准教授 (70349801)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アクティブバランスシーティング |
研究概要 |
車いすの座面~背面との相互作用に関わる主要な脊柱(頸椎―仙椎)を中心に骨盤にかけての3次元有限要素モデルを構築した。構築したモデルを用い、長時間スケールにおける力学的相互作用の可視化のための解析条件の設定の基礎的検討を行った。具体的には,(1)軟組織で構成される椎間板要素モデルの精緻化の程度とシミュレーション結果との確認,(2)構築モデルに時間ファクターを導入した動的解析の確認,を遂行した。(1)では、シミュレーションの出力結果を確認しながらモデルの必要精度の見極めを行った。非線形材料特性となる当該部位のモデル構築は、その要素の幾何学的形状によって結果に大きく影響を及ぼす可能性が高いため,精緻さを求める程度を確認しながらの構築が必要であった。(2)では、導入したワークステーションを用い、第一歩として線形材料特性に単純化した動的解析を行った。その結果、短時間(シミュレーション上の時間ファクター)で計算誤差が想定よりも出現が多く、遂行困難となった。本計算は、陰解法数値解析で行ったが、解の収束精度の影響が予想より大きいことがわかった。このため次年度は解法を変更することで目的達成を図ることが必要と判断できた。 この他、車いす上での身体の変形程度の遷移を把握する目的で、質的調査を計画していたが,量的なデータ取得の必要性があると判断し、その検討から進めることとなった。具体的には画像処理によって3次元データ取得が可能な携帯性に優れた安価なシステムが市販されたこともあり、生活現場での量的データ取得の可能性が増した。主に当事者の車いす座位状態の背面形状のデータを取得して、将来の力学シミュレーション結果との比較を可能にするために、当該システムを導入してデータ取得法の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構築した3次元有限要素モデルのうち、頭骨と下肢のモデル化完了には至らず、遂行中となっていることが理由である。また長時間ファイクターを模擬したシミュレーションの試行では,数値計算の解析誤差の関係から収束されずに短時間で計算実行が終了してしまうことが課題となった。本解析では計算手法である陰解法にて数値解析を進めていたが、陰解法には限界があることがわかった。このため次年度に、異なる計算法である陽解法が可能となるツールを導入して、長時間ファクターを模擬するシミュレーションを行い、その妥当性の確認を進めることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
身体座位―車いす一体モデルを構築して、重力―身体―機器(車いす)の力学的な相互作用のシミュレーションを進め、解析結果の妥当性を見極める。具体的には(1)重力線(鉛直軸)からの向きを変えた表現により、車いす座位状態を模擬した簡易な解析モデルによる検討、(2)実際の介助型車いすの有限要素モデルを構築した重力―身体―車いすモデルによる検討、を行う。(1)は、立位姿勢と座位姿勢における力学状態の比較が容易と考えたことによる。すなわちモデルの妥当性について議論を得やすくなる。車いすの座面が水平面から、背面が鉛直線からそれぞれ角度を有しており、立位姿勢と比較して車いすの座位姿勢は重力の作用方向が異なることによる。(2)は、アクティブバランスシーティング仕様の介助形車いすSTB-07(Nissin社製)を導入する。STB-07の座位姿勢を支持する領域を中心に、車椅子の有限要素モデルの構築を行い、目的達成に向けて進めていく。この他、当事者の車いす座位状態について背面形状のデータの取得可能な手法構築を引き続き遂行し、今年度内に当事者への測定へ進められることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
介助形車いすSTB-07(Nissin社製)を導入し、身体のみでなく機器環境としての車いすの有限要素モデルの構築を開始する。シミュレーションにおいては、ANSYS Academic Research LS-DYNA 年間レンタルを導入し、陽解法を適用した長期間スケールの力学的シミュレーションを試みる。この他、アイルランドにて行われるEuropean seating symposium 2013へ出席し、本研究発表のための旅費として使用する。
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