研究課題/領域番号 |
24500627
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
小田桐 匡 京都橘大学, 健康科学部, 助教 (30388904)
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研究分担者 |
上田 敬太 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60573079)
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キーワード | 系列物品使用 / 失行 / 注視行動分析 / 道具使用 / 生活関連動作 / 行為のエラー / 神経心理学 / 観念失行 |
研究概要 |
本研究の主たる目的は,軽度認知障害者や早期アルツハイマー病患者の系列物品使用(生活関連動作)の質的変化を分析することである.その目的を達成するため,生活関連動作との関連性が想定されている一連の神経心理検査と,生活関連動作遂行時の眼球運動計測を行い,生活関連動作の失敗に至る行動特性を視覚探索という側面から把握すると同時に,その神経基盤を心理検査との関連性から考察することを手段としている.本年度は,昨年度に引き続き,年齢,教育歴等をマッチングした健常被検者のデータを記録してきた.端緒的な分析の中からではあるが,生活関連動作の遂行能力と視覚探索との関連性に関して,いくつかの特徴が明らかになってきた.60代から80代までの健常高齢者約20名に対し,神経心理検査,生活関連動作および眼球運動計測を実施した結果,80代の健常被検者では,他の年代に比べ,遂行機能や短期記憶等の神経心理検査において低下を認め,またそれらに対応したかのような視覚探索の特徴が観察出来た.すなわち,後々の物品操作に関わる対象物品を事前に特定するといった計画的な視覚探索は総じて少ない印象であり,その一方で,場当たり的な視覚探索が観察された.後者の視覚探索の場合,物品への視覚的な特定が,直ちにその物品への到達把持運動に至るような行動が特徴であり,これらはアルツハイマー病患者の行動特性に良く類似していた.しかしながら健常被検者の場合,このような行動パターンを示していても,最終的には,正しい動作順序に修正し,生活関連動作を終了させていた.ただし,2,3名の健常被検者で行動エラーを認めており,これらの被検者の場合,エラーへの気付きや修正もなかった.詳細な分析は今年度の課題である. このような研究成果の一部を発表した論文に対して,昨年9月に日本神経心理学会より,第9回優秀論文賞を受賞することが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シルバー人材センターなどへの依頼により,60代から80代までの健常被検者のリクルートと実験が大幅に進んだ.その一方で,軽度認知障害者や早期アルツハイマー病患者のリクルートに困難を極めた.そこで共同研究者とともに,京都大学医学部附属病院内の別のもの忘れ外来の医師に協力を依頼したり,京都市内の民間病院にまで研究協力者の募集を広げたが,疾患の進行具合や,対象患者の条件になかなかマッチせず,満足な症例数を確保することが出来なかった。しかしながら,さらに新たな研究協力を得られる医師の紹介を受け,ようやくまとまった症例を紹介いただけることになった.【今後の研究の推進方策等】参照.
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今後の研究の推進方策 |
患者リクルートをやり遂げるために,研究協力が可能な医師を昨年度までは探してきた.その努力の結果,本研究の共同研究者である医師に加え,もの忘れ外来を専門に行う2名の医師にあらたに協力いただくことが実現した.その結果,今年度は少なくともあと10名程度の患者リクルートが可能な状況まで見通すことが出来るようになった.現在の計画では,7月末までに,全ての被検者の実験を終える予定である.視線データの分析は実験と並行して進めるため,9月末にはデータ分析が終了する予定である.研究の報告は平成27年の2月に国際学会があるため,その成果の一部を報告する予定である.論文発表は平成26年度中に投稿予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
患者の実験協力者に対する謝金と,計測データの分析を目的とする研究協力者への謝金が,次年度使用額の主たる目的である.すでに述べたように,平成25年度は患者リクルートが遅れていたという状況があった.そのため患者被験者への謝金およびデータ分析を行う研究協力者への謝金は本年度最も必要となる. 患者リクルートおよび年齢および教育歴のマッチングに必要な予備的な健常被検者のリクルートに使用すると同時に,これらのデータ分析を行う研究協力者への謝金とする
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