研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎など呼吸器疾患は世界的に増加しており、2020年には心臓病・脳卒中に次ぐ世界の死亡原因の第3位になると予想されている。わが国においてもCOPDの潜在患者数は530万人にも達すると報告されている。呼吸器疾患は、呼吸機能に悪影響を及ぼすだけでなく、下肢骨格筋の最大随意収縮力の低下や横隔膜筋線維の遅筋化、代謝亢進による体重減少と栄養障害なども報告されており、現在では骨格筋機能異常や栄養障害、全身性炎症などを呈する全身性疾患として捉えられている。本研究の目的は、COPDの代表的疾患の1つでもある肺気腫症モデルを作成し、至適運動負荷を設定後にトレッドミル走行運動を実施して、その後の呼吸機能や横隔膜機能、呼吸中枢、炎症所見などを生理学、組織化学、生化学的手法を用いて解明することである。Wistar 系雄ラットをシャム群(SH群)、肺気腫群(PE群)、肺気腫+運動群(EX群)の3つのグループに分け、PE群およびEX群にはタバコ煙水溶液およびリポポリサッカライドを4週間気管内に噴霧投与した。さらにEX群には、4週間の投与期間の後半2週間においてトレッドミルでの走行運動を実施した。肺組織におけるマクロファージの浸潤はPE群で広範囲に観察されたが、EX群ではその浸潤は縮小した。横隔膜および長趾伸筋の筋張力は、PE群と比較してEX群で上昇し、血清サイトカインも低下していた。これらの結果から至適な走行運動は呼吸機能や筋機能を改善させるだけでなく、肺組織の炎症症状も軽減できることが示唆された。
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Sport Sciences for Health,
巻: 12 ページ: 91-97
http://webinfo.kio.ac.jp/kio1/news_s.asp
http://imagita.greater.jp/