食事によって嚥下能が低下することを見つけ、健常人で行える嚥下遅延モデルを作成した。この満腹による嚥下抑制は血糖値の上昇によるのではなく、胃の伸展によって引き起こされることを明らかにした。高齢者の嚥下機能低下患者で改善効果のある黒コショウの刺激はこのモデルでも有効であった。ラットに於いて満腹による嚥下抑制の中枢機序が調べられ、満腹物質であるグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)の延髄背側複合核群への微量投与で反射性嚥下を抑制し、この作用はGLP-1拮抗薬によって、延髄背側部の内側孤束核の局所破壊によって消失した。従って満腹による嚥下抑制は延髄背側部の内側孤束核が関与すると考えられる。
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