研究課題/領域番号 |
24500634
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
植村 修 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究センター), リハビリテーション科, 医長 (90365396)
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研究分担者 |
武田 湖太郎 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究センター), 生体機能制御解析室, 室長 (50618733)
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キーワード | 脊髄損傷 / リハビリテーション / チャネルロドプシン |
研究概要 |
皮質脊髄路を特異的に興奮させるために、神経細胞に発現すれば光刺激によりその細胞を興奮させることのできる物質であるチャネルロドプシン(ChR)を中枢神経に発現するトランスジェニックラットを入手した。それを用いて脳表から運動野を刺激し、下肢筋から電気活動を記録するシステムを構築した。 脊髄損傷モデルを作製し、それに対する機能再建法である肋間神経を用いたバイパス術の再現性を確認した。 また、大脳皮質から脊髄まで伸びる皮質脊髄路に特異的にChRを発現するトランスジェニックラットを作製している。皮質脊髄路に特異的に発現している遺伝子を含むBACライブラリを入手し、その遺伝子座にChRを挿入した。この組み換え体を用いてトランスジェニックラットの受精卵に顕微注入を行っている。トランスジェニックラットは陽性個体を選別しているところである。 上記の技術ならびに動物を用いて、損傷した皮質脊髄路を生体に過剰なストレスをかけることなく特異的に刺激し、バイパス術や運動療法に加えて、どのような外的刺激が皮質脊髄路損傷後の機能回復に影響を与えることができるかを検証する足がかりを作ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
皮質脊髄路を特異的に刺激する目的で入手したThy1-ChRトランスジェニックラットは、中枢神経全体に発現しており、皮質脊髄路のみを特異的に刺激することが困難であった。また、ラットにおいては脳表からの刺激では、青色光が運動野の5層にまで到達せず、運動閾値を超える刺激を与えることができなかった。光ファイバーを用いて刺激するにしても、中枢神経に広くChRを発現している当該ラットでは、皮質脊髄路のみを特異的に刺激できず、刺激の結果得られる行動反応の解釈が困難であると考えられた。 この問題を解消するために、皮質脊髄路に特異的にChRを発現するトランスジェニックラットを作製することとした。トランスジェニックラットを作製するためのDNAコンストラクトは完成しており、現在は受精卵に顕微注入をしている状況である。既に500個体以上への注入を行っているが、陽性産仔を得ることができていない。今後も顕微注入を継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
トランスジェニックラットが得られていないため、系統樹立が喫緊の課題である。顕微注入による作製は継続して行うが、同時に他の方法を用いて系統樹立を行う予定。具体的にはCRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集により、目的とする遺伝子座にChRをノックインする予定。遺伝子の発現は、マウスので報告であるが、gensatやAllen brain atlasなどのデータベースと比較することで確認する。いわゆるoff-target効果は、複数の系統を比較することで除外することができる。ノックインによって当該遺伝子座がヘテロとなるが、ノックアウトマウスの結果から明らかな表現系の異常は見られないことが示唆されており、ラットにおいても同様の結果が得られると推測される。
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次年度の研究費の使用計画 |
トランスジェニックラット作製費用(受精卵へのインジェクション)は系統樹立後に請求されるため、系統樹立前の当該年度では支払が行われていない。 受精卵へのインジェクション費用、系統が樹立できない時に備えて別の方法によりノックインラットを作製しており、そのための試薬や系統樹立のための費用に充当される予定。
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