研究課題/領域番号 |
24500635
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
堀田 晴美 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (70199511)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 脳機能 / マイネルト核 / アセチルコリン |
研究概要 |
咀嚼などの口の運動は脳局所血流を増加させ、認知症予防にも効果があると言われている。しかし、その神経性機序はほとんどわかっていない。本研究では、咀嚼運動が脳機能に及ぼす効果の神経性機序を、認知機能と脳血流調節に重要な、前脳基底部コリン作動系に着目して調べることを目的とした。本年度はラットを用いて、①咀嚼筋活動時の大脳皮質局所血流の変化、②その変化における前脳基底部の関与について調べた。本研究は、経験に依存してきたリハビリテーション技術に対して、明確な科学的論証を与える。 ラットをペントバルビタール麻酔下し、咀嚼筋の自発活動が現れやすい麻酔深度で実験を行った。体温と呼吸をモニターし、体温コントローラと人工呼吸器を用いて体温と呼吸を生理的状態に維持して実験を行った。細く柔らかい金属線電極を筋に刺入・固定して活動電位を導出し、主な咀嚼筋の一つである咬筋の筋電図を記録した。レーザー・ドップラー法で大脳皮質局所血流の時間的変化を連続測定し、筋活動に伴う脳局所血流変化を調べた。大腿動脈にカテーテルを挿入し、一般動脈圧を観血的に連続記録した。咬筋活動前後の各パラメータの記録波形をコンピュータに取り込んで加算平均し、反応の潜時や時間経過を調べた。神経細胞活動抑制薬(GABA受容体作動薬ムシモール)を、一側マイネルト核に微量注入した。マイネルト核から大脳皮質への投射は一側性(同側性)であるため、健常側半球と抑制・破壊側半球とで大脳皮質における反応を比較して、前脳基底部コリン作動系の関与の有無とその程度を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って、予定通りに実験を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25-26年度は、咀嚼筋活動に伴うアセチルコリン放出量およびマイネルト核の神経細胞活動応答を調べ、さらに筋活動とマイネルト核との間の脳内神経回路を同定する。 24年度にマイネルト核の関与が最も顕著に見られた大脳皮質領域にプローブを固定し、レーザードップラー法で脳局所血流を連続記録する。マイクロダイアリシス法で、血流測定部位近傍の大脳皮質細胞外アセチルコリンを採取し、高速液体クロマトグフィーと電気化学検出器で測定する。咬筋活動時の脳局所血流増加反応に伴ってアセチルコリン放出量が増加するかどうか調べる。マイネルト核にシリコンプローブ電極を刺入してマルチユニット活動電位を記録する。大脳皮質に直接投射する神経細胞を、大脳皮質への電気刺激で逆行性に同定する。咬筋活動前後の神経活動記録波形をコンピュータに取り込み、加算平均し、反応の潜時や時間経過を脳局所血流反応と比較する。マイネルト核の局所電気刺激による大脳皮質血流増加反応の潜時が2-3秒であることから、咬筋活動に伴う血流増加の2-3秒前にマイネルト核の神経細胞活動が増加し始めることが予想される。 セントラルコマンドの関与:咬筋活動の出現に先行してマイネルト核神経細胞活動の亢進が見られた場合には、セントラルコマンドの関与が予想される。これを確かめるため、人工呼吸下で三叉神経運動核の咬筋運動神経細胞活動を記録し、筋弛緩薬を投与して筋活動の結果生じる求心性入力を遮断した後にも、咬筋運動神経細胞活動に伴う脳局所血流反応が見られる可能性を調べる。 末梢性入力の関与:三叉神経を微弱な電流で刺激して筋収縮を誘発し、末梢からの求心性情報が脳局所血流増加反応を誘発する可能性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請課題を遂行するにあたり、以下の理由から各種消耗品、旅費、謝金の経費を必要とする。 物品費:(1)本研究は、実験動物(ラット・マウス)を用いたin vivoの研究であり、動脈や気管への挿管などの細かい手術を行うため、精密な手術器具が必要である。(2)麻酔薬や神経細胞抑制薬、トレーサーや染色用試薬などの種々の薬品類が必要である。(3)神経活動の記録のためのシリコンプローブ電極が必要である。(4)脳細胞外アセチルコリンを採取するためのマイクロダイアリシス用プローブが必要である。 旅費:国内外学会での研究成果発表と最新情報収集のために、旅費が必要である。 謝金など:専門分野の研究者に最先端の研究成果をセミナーしてもらい、知識を深めるため、セミナー謝金が必要である。 その他:英文論文発表にあたり、英文校閲費用を必要とする。
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