研究課題/領域番号 |
24500642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
竹内 義則 大同大学, 情報学部, 准教授 (60324464)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 福祉情報工学 / パソコン要約筆記 / 情報保障 / 聴覚障害 |
研究概要 |
聴覚障害を持つ学生が大学に通い,健聴者と一緒に講義を受講する機会が増えている.その際の支援の一つとして,講師が発話した内容を要約筆記し,聴覚障害学生に対して提示するといった方法が挙げられる.しかし,大学で使用される数式等の入力は,要約筆記文作成者にとって手間のかかる作業であるという問題がある. 本年度は,まず講義映像から抽出された指示対象物を作成者に提示し,要約筆記文中に直接埋め込むことができるエディタを作成した.エディタは上部の画像提示部と,下部のテキスト入力部に分かれている.講義映像内から抽出された指示対象物を,画像提示部に表示させる.表示された画像は,それぞれの対応するキーを入力することでテキスト入力部に挿入することができる.このエディタを使用することで,多くの労力を必要とする作業だった数式等の入力を,簡単なキーボード操作により,画像として要約筆記文中に挿入することが可能である. 提案したエディタを用いて,要約筆記実験およびその評価を行った.実験の被験者は情報系学生8名で,1名につき練習用映像と評価映像をそれぞれ2回ずつ見せ,その内容を要約筆記した.2回のうち,どちらか1回はエディタを用い,画像挿入機能を使用して要約筆記を行った.そして実験終了後に被験者に対して,行った要約筆記についてのアンケートを採った.その結果,画像挿入の機能を使用して行った要約筆記のほうが,使用しないものより要約筆記のしやすさが向上している傾向が見られた.また,ほぼすべての被験者が,画像挿入の機能は要約筆記をするうえで助けになったと回答した.さらに,作成された要約筆記文について,要約筆記文に記述すべき項目の割合は,画像挿入の機能を用いて作成された要約筆記文の方が大きかった.この実験から,使用した画像挿入の機能により要約筆記文の作成が改善されると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは異なり,25年以降に行う要約筆記文中に数式を埋め込むエディタの研究開発を中心的に行った.平成24年度の計画に関しては,来年度以降に実施する.数式を要約文に埋め込むシステムを作成し,その評価を行ったことにより,研究計画全体としては,おおむね順調に進展していると判断する.特に,実際に要約筆記を行っている人にこの研究を説明する際に,要約筆記文中に数式を埋め込むシステムが稼働している意義は大きく,わかりやすくこちらの意図を伝えることが可能となる.また,連携研究者から平成24年度に行う数式抽出の自動化に関しては,要約筆記者に依頼することもできるので,急いで実施する必要はないという助言をいただいている.
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者と打ち合わせを行い,今後の研究推進方策を策定した. 要約筆記文の作成者や聴覚障害学生,そして支援現場で使用されている支援機器の作成者などに対してインタビューを行う.インタビューを行い,意見を集めることで,より使いやすく学生が理解しやすい要約筆記文を作成するシステムを作成することができる. 研究で使用した映像の内容が難しいものであったため,評価を行うことが困難ではないかと指摘を受けた.そのため,教育番組で放送されている高校レベルの数学や物理の映像を参考にして,より理想的な講義映像を作成する.自分で講義映像を作成するにあたり,講義中で使用するスライドが必要になるため,番組の映像を基に講義スライドを作成する.加えて,今後の要約筆記実験における評価として,疲労度や文字入力数など,数値として表すことができるものを用いることを検討する.キーボートのタイプ数を測定するようにシステムを改良する必要がある. 名古屋大学の障害学生支援室で,聴覚障害を持った学生に対して支援を行われている方がおられるため,その方とお会いして聴覚障害学生への支援について助言をいただくことを計画する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,今年度に作成した要約筆記文中に数式を埋め込むエディタを改良する.まず,高校数学の放送を参考に,模擬講義映像を作成する.そのために,講義映像の撮影装置が必要となる.改良したエディタを使用して,詳細な評価データを得る実験を行う.そのために,実験用計算機,要約文の入力装置,通信機器等の実験装置が必要となる.また,連携研究者との打ち合わせ旅費(名古屋~つくば)と,今年度の研究成果を発表するために,平成25年度電気関係学会東海支部連合大会での成果発表(名古屋~浜松)の旅費が必要となる. 研究計画を変更したために,次年度に使用する予定の研究費が発生している.今年度の元の研究計画は,次年度以降に実施するため,その時に合わせて使用する計画である.
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