研究課題/領域番号 |
24500642
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
竹内 義則 大同大学, 情報学部, 准教授 (60324464)
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キーワード | 福祉情報工学 / パソコン要約筆記 / 情報保障 / 聴覚障害 |
研究概要 |
聴覚に障害がある学生が大学に通い,健聴者と一緒に講義を受講する機会が増えている.その際の支援の一つとして,講師が発話した内容を要約筆記し,聴覚障害学生に対して提示するといった方法が挙げられる.しかし,大学で使用される数式等の入力は,要約筆記文作成者にとって手間のかかる作業であるという問題がある. 本年度は,前年度に撮影した講義映像から抽出された指示対象物を作成者に提示し,要約筆記文中に直接埋め込むことができるエディタの評価を行った.エティダは上部の画像提示部と,下部のテキスト入力部に分かれている.講義映像内から抽出された指示対象物を,画像提示部に表示させる.表示された画像は,それぞれの対応するキーを入力することでテキスト入力部に挿入する二とができる.このエディタを使用することで,多くの労力を必要とする作業だった数式等の入力を,簡単なキーボード操作により画像として要約筆記文中に挿入することが可能である. 提案したエディタを用いて,要約筆記実験およびその評価を行った.実験の被験者は情報系学生22名で,1名につき練習用映像と評価映像をそれぞれ2回ずつ見せ,その内谷を要約筆記した.2回のうち,どちらか1回はエディタを用い,画像挿入機能を使用して要約筆記 を行った.そして実験終了後に被験者に対して,要約筆記についてのアンケートを採った.その結果,画像挿入の機能を使用したほうが,使用しないものより要約筆記のしやすさが向上した.また,すべての被験者が,画像挿入の機能は要約筆記をするうえで助けになったと回答した.被験者22名中20名について,画像挿入機能を使用して要約筆記を行った場合の方が要約筆記文中に記述された項目の割合が高いという結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り要約筆記文中に数式を埋め込むエディタ研究開発を中心的に行った.平成24年度に開発したエディタの評価実験を行った.評価実験を行う講義として,NHKの高校数学Iのテレビ放送を参考に,講義映像を作成した.22名の大学生,大学院生に要約筆記の実験の協力を得ることができた.評価実験から,予定通り要約筆記に数式の挿入機能が有効であるという結果が得られた.また,多くの被験者による実験により,前年度は未確認であった統計的な有意差を確認することができた.この内容を国際会議へ投稿し,受理された. これまでに行ってきた講義映像から数式を抽出するシステムを改良した.この内容を電子情報通信学会論文誌に投稿し,採録が決定した.
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者と打ち合わせを行い後回しにしていた,自動的に数式を抽出し提示するシステムの研究開発を行う.講師の発声から指示語や数式を抽出する.また,講師を撮影した映像から講師の動作を認識し,指示動作抽出する.これらの抽出結果を統合し,入力者が 要約文を作成するために必要な映像情報を抽出する. システムは,音声入力のためのマイクロフォンと映像入力のためのビデオカメラ,その入力を処理する計算機,入力者が使用するパソコンとそれらが通信するネットワークからなる.マイクロフォン入力を計算機内に取り込み,音声認識を行う.ビデオカメラからの映像をコンピュータに取り込み,指示対象抽出の処理を行う.処理によって得られた数式画像を共有フォルダに保存する.前年度までに開発したエディタシステムは,その共有フォルダを監視し,新しい画像ファイルが記録されたら,それを数式提示部に表示することによって,表約筆記者に提示する.
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次年度の研究費の使用計画 |
計画していた金額よりも安価に購入できたため. 円安の影響を受けた国際会議参加費,物品費等で使用する.
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