研究課題/領域番号 |
24500645
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森本 かえで 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (40625612)
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研究分担者 |
四本 かやの 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (10294232)
橋本 健志 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (60294229)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会参加 / e-ラーニング / 統合失調症 |
研究概要 |
1. 研究目的:本研究は、就労を目指す精神障害者へのパソコン利用支援策を構築する基盤として、ネットワーク上で公開し広く社会的検証を求めることができるパソコン技能e-ラーニングプログラムを研究開発することを目指す。そこで平成24年度より、e-ラーニング開発の足がかりとしてまず研究代表者が開発した統合失調症者向けWord2003学習テキスト(神大テキスト)の学習効果の確認を行っている。統合失調症者に対しパソコン講座を行い、市販の学習テキストと比較することで学習効果を確認中である。 2. 方法:対象者は兵庫県内の授産施設に通所中の統合失調症者40 名を予定し、現在で16名分の確認が終了している。無作為に2 群に分け、一方には開発した神大テキストを、もう一方には市販の学習テキストを用いてWord2003 を学んでもらう。学習は自習形式の講座とし、神戸市総合福祉センターにて各人合計10 回程度実施している。日時は受講者が任意に決定し、受講者3名に対し質問を受けるインストラクターを1人配置する。講座の前後には学習効果を計測するためPC操作技能テストを行い、また学習中の手元を撮影するカメラ、テキストを撮影するカメラ、操作中の画面録画の3つで学習進捗度及び学習中の問題点を記録している。被験者へのテスト結果に関する簡単なインタビューも実施し、得られたデータを以下のように分析している。 ①テキスト学習効果の定量的分析:PC操作技能テストの得点変化、学習進捗の速さを統計学的に分析し学習効果を検討する。 ②学習中に現れる問題点の分析:記録した操作画面や手元の動画から、受講者がどのような操作内容やどの部分の操作につまずいているのかを分析し、問題点を抽出する。この分析には、DKH社の行動コーディングソフトを用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度は、神大テキストの学習効果確認の完了とe-ラーニングシステム開発への着手を行う予定であった。しかしながら平成25年5月現在、学習効果確認が完了していないという状況である。この主な理由として、学習効果確認のためのパソコン講座の進捗が想定外に遅かったことが挙げられる。当初計画では各受講者がそれぞれ講座の第3章までを平均8回程度で修了する予定としていたが、実際にはこの受講予定回数を超える受講者が存在した。そのため効果確認が長引いており、これに伴ってe-ラーニングシステム開発が後ろ倒しになっている。
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今後の研究の推進方策 |
前項にて実行中の効果確認が終了した後、神大テキストを基にした、新たなe-ラーニングシステム(Word2013 利用)の開発を行う。開発は以下の手順で行う。 ①カリキュラムの決定:神大テキストを作成した際のノウハウを基に、カリキュラムを決定する。不要な情報や大量の情報は統合失調症者に混乱を起こすため、実際にWord2013 を扱う上で必要な部分のみのカリキュラムとする。単元の順番も、混乱の起こりにくい順になるよう配慮する。また、各単元の最後には簡単なカリキュラムテストを設けることで、受講者自身が成長を実感しやすいようにする。 ②インターフェースや音声案内の設計:研究代表者の先行研究より、統合失調症者がどのような設計であれば学びやすいかを検討した結果を基に設計する。具体的には、小項目の説明ごとに毎回実際に操作してもらう、説明画面はほぼ全画面表示にする、項目を次に進める案内をわかりやすくする、バックログ機能の付加、等である。音声案内についても、話す内容やスピードなど、検討を行なう。 ③ベータ版の作成及びベータテスト:要求仕様を満たしカリキュラム全体の3 割が完成したところで、一旦ベータ版を作成し、神戸大学の学生60 名に対して実環境でのベータテストを行なう。アンケートを用い、分かりにくかった点や操作しづらい点など、問題点を自由に記述してもらい、定性的に分析する。ベータテストと分析を繰り返し、仕様の見直しを行なっていく。 ④Q&A サービスの設置: Q&A サービスを設置し、受講者へのサポート体制を確立する。 ⑤完成したe-ラーニングプログラムの設置:完成したプログラムは、神戸大学で管理・運用を行なう。インターネットを使用することで、受講者はどこでもe-ラーニングプログラムを利用することが可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究費からの繰り越し分を用いて、上記研究推進方策の①カリキュラムの決定を行いe-ラーニングシステムの開発に取り掛かる。平成25年度予算は、予定通り研究推進方策の②~⑤を行いe-ラーニングシステムを完成させることに用いる。
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