研究課題/領域番号 |
24500648
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
宮崎 英一 香川大学, 教育学部, 教授 (30253248)
|
研究分担者 |
坂井 聡 香川大学, 教育学部, 教授 (90403766)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | スマートフォン / マイクロコンピュータ / 障碍者支援 / 入力デバイス / タブレットPC |
研究概要 |
本研究はUSB システムとスマートフォンのシステムを組み合わせる事で、これを用いた発達障害者の教育方法の支援や運動機能障害者のリハビリテーションへの運用までをも視野に入れた、学習支援用教材の開発及び日常生活の質的向上をシームレスに実現するワンデバイス障害者支援システムを完成させる事にある、 肢体不自由な方の場合はユーザインタフェースの一般化が困難であり,動作の具合や可動範囲等を症例に合わせて状態を細かく調整する必要がある。このような条件を満足するにはハードウェアだけで作成した場合,後でのユーザインタフェースのタイミング調整が即回路の再設計となるので,事実上は実現が困難であると考えられる。特に筋ジストロフィーの方の場合には,手指の位置精度は比較的高く,正確に座標を示す事ができるが,その反面,手指の稼働範囲が狭くまた操作力が弱いという問題点がある。このため。スマートフォンのようにタッチ操作でオペレーションを行う場合,事実上操作が不能な場合が発生してしまう。 そこで本研究ではこの問題を解決するため,インタフェースの特性をプログラミング上から変更可能なPIC をベースとしたスマートフォン用ユーザインタフェースの試作を行った。その結果として,ユーザのニーズに応じて簡単にユーザインタフェースの特性がカスタマイズ可能になった また障がいの症例によって手指の運動の正確性は保たれるものの,可動範囲が狭い場合にはタッチパッドでは大きな領域の描画は困難であるが、試作した入力補助デバイスでは,入力感知部分のどこにでも触れてさえいれば,カーソルの移動情報が出力され続けるので,可動範囲が狭いユーザにとって大きな利点となる事も示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的では、研究期間中にスマートフォンの入出力ハードウェア内部構造の解析を行いi)各センサ及びAndroid Open Accessory を用いたUSB 制御モジュールの実装、およびii)PIC を用いたスマートフォンのユーザプログラムからの制御モジュールの開発 の確認を行い、これらを利用したUSB ユーザインタフェース・モジュール構築を行う予定であった。 特に平成24年度は「基礎的システムの開発」を主目的とし、「基礎となるスマートフォンシステムとPIC・センサ群を用いたUSB インタフェースシステム開発」を行う予定であったが、現段階では、ii)のPIC を用い制御モジュールは完成しているが、スマートフォンとの連携に関しては、HIDクラスを介した基本的なユーザインタフェース部分だけであり、スマートフォンの持つ各種センサのハードウェア制御に関してはまだ実現できていない状況である。 これに付随して使用者の利便性に大きな影響を与える音声制御の部分もソフトウェアからの制御に留まっており、肝心のハードウェアからの制御ができていない状態である。今後はこのハードウェア部分の解析を行い、スマートフォンの音声入力を利用したユーザインタフェースとこれにより家庭内にあるテレビやエアコンのような一般家電製品の制御を行うシステムも並行して開発していく必要がある。 また平成24年~同25年にかけた目標として「ユーザからのフィードバック」は研究協力者として特別支援学校の教諭等から開発したユーザインタフェースの実地テストを行ってもらい、その意見をフィードバックしてもらっているが、まだ2件と少なく、実用化を含んだテストを支援者等に実施してもらうには、さらに相談件数を増やしていく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は先の初期の計画の目標に従い、【現在までの達成度】で示した達成度の低かったなかでも大きな問題となる「基礎的システムの開発」と「基礎的システムを利用した学校および在宅現場での応用テスト」を並行して行う必要がある。そのためには開発と応用テストを同時に行う必要があるが、PICを用いて試作したユーザインタフェースはコンパイラやリンカといったソフトウェアの開発環境およびPICライターといったハードウェア環境の両方を備えたシステムが必要になり、応用テストを行う支援学校や病院といった出先では、その場でのソフトウェア修正が困難であった。そのため、従来は出先でテストしたデバイスを一旦、開発環境のある大学まで持ち帰り、修正後、またテスト先まで持っていくというテスト運用上の手間がかかっていた。 そこで今後の研究では従来からのPICを基礎として,新しいマイクロコントローラ・システムとしてAVRマイコンをシステムのコアとし,開発環境も含めた状態で提供されるArduinoを利用して障害者支援デバイスの施策を行う。この結果,従来のPICを用いた支援システムでは実現が困難であったユーザの学校や病院等に直接出向いて,その場でユーザの要求に応じたプログラムのカスタマイズが可能になる。そのため,より細かいレベルでユーザの要求にこたえられるため,ユーザの利便性が向上するだけでなく,ユーザを支援する側の負担の減少に迅速に答える事が可能になると考えられる。 しかし今後,このようなデバイスが一般化して広く使用できるようになるためには,勉強会やチュートリアル・ショップを開催し,学校のような教育現場だけでなく,広く作業所や病院等においても装置だけでなく,具体的な応用例までをも含めて説明を行う必要がある。よって今後はデバイス単体の開発だけでなく,このような運営システムも考えていく必要があると思われる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記で述べたように、今後はユーザインタフェースのデバイスのマイクロコンピュータ部分をPICと並行してAVRマイコンで試作する必要がある。平成24年度の予算では、予備テストとしてAVRマイコンを部分的にテスト運用し、その効果が確認できた。よって本年は重点的にこのデバイスを試作し、応用テストを行う必要がある。よってデバイスの「インタフェース」作成に必要なマイクロコンピュータのチップ等、電子素子の購入、および学会誌発行別刷り代(平成24年度2項目発表)を予定しているので、これも合わせて66万円を計上するものである。 またはこれと同時に、本年度の日本産業学会全国大会(山口大学)やATACカンファレンス(京都)において本件で発表を予定しているので、これに伴う旅費15万円も計上するものである。
|