研究課題/領域番号 |
24500648
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
宮崎 英一 香川大学, 教育学部, 教授 (30253248)
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研究分担者 |
坂井 聡 香川大学, 教育学部, 教授 (90403766)
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キーワード | スマートフォン / マイクロコントローラ / 障がい者支援 / タブレットPC / PIC / 画像認識 / NUI |
研究概要 |
本年度は、センサ群とUSB ユーザインタフェースを組み合わせた高機能型ユーザインタフェースの追加及び、制御用ハードウェアの拡張を行った。 スマートフォンのタッチ操作やセンサ信号をインタフェースとして赤外線リモコンの制御等を行わせるシステムを試作した。スマートフォンに搭載されているセンサの値が利用できれば、タッチパネルの操作が困難な方でも、スマートフォンがスイッチとしてそのまま使用でき、ユーザインタフェースの向上が期待できる。 これを赤外線リモコンと組み合わせる事で、テレビといった家電の赤外線リモコンを1つのシステムで制御できるため、複数のリモコンを準備する必要がない。赤外線リモコンデバイスは、マイクロコントローラをベースとし、これに赤外線受光モジュール、赤外線LEDといった3つの部品から構成されている。このため、誰でもが簡単に作成可能であり、教育現場や家庭においても導入がし易い。更にスマートフォンの持つ傾きセンサを入力トリガーとし、スマートフォン本体の傾きに応じてDVDプレイヤーの制御が可能となった。 この他、カメラを用いて撮影されたビデオ画像からユーザの動きをトリガーとし、コンピュータ等を操作するユーザインタフェース・デバイスを試作した。ユーザの動作を入力インタフェースとして利用するため、モーション・トラッキングを利用した。WEBカメラにより、1秒当たり30フレーム撮影された画像に移動物演算処理を行い、動き検出を行っている。ここでは、動き検出をトリガーとし、シリアルポートを通じて試作した仮想キーボードデバイスから予め設定されたキーコードをコンピュータに出力している。その結果、カメラで撮影する領域を調整する事で、ユーザの指の微小な動作から腕全体が動くような大きな動作まで、幅広い動作に対応したインタフェースが提供できる事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主目的は「スマートフォンに実装された各種センサといったハードウェアの利点と独自に開発したUSB インタフェース制御プログラムと組み合わせる事で、複数の機能がワンデバイスで簡単に実現可能となるシステム」の開発であった。そのため、組み込み機器の制御に用いられるPIC(Peripheral Interface Controller)をコントローラとし、これを用いたUSBインタフェースの試作を予定していた。ただ、幾つかの入力デバイスを試作する途中でPICと同等な機能を有するマイクロコントローラとしてArduinoの方がプログラムの開発だけでなく、ハードウェアの構成においてもきわめて簡便である事がわかった。そこで当初の予定とは異なり使用するデバイスをPICからArduinoに変更した。その結果、従来のPICを用いたデバイスよりも簡単な回路構成で外部入出力(赤外線リモコンの制御)や通信機能(Bluetooth)の使用が可能になった。またWEBカメラを動き入力としたNUIも試作し、その結果、タッチパネルの操作に問題がある方においても入力インタフェースとしての可能性を示す事ができた。 このようにして当初の目標であった安価で一般的に入手しやすく誰でもが使用可能なインタフェースとして、幾つかのデバイスを試作する事ができた。しかし、目標の1つである「1つのデバイスだけで教育と生活支援の両方をサポートするシステム」としては十分な機能が得られていない。試作したシステムは部分的には「日常生活の質の向上(QOL)」が期待できるが、「教育や運動面の向上」といった点には十分対応出来ていない。これらの問題点は、単にデバイスの作成だけでは解決せず、ユーザの目的や運用状況、また周囲の環境やサポートの違いといったファクターに大きな影響をうける。よって、今後はこの分野の研究を進めて行く必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、先の「現在までの達成度」で問題になっていた「教育や運動面の向上」を向上させるために、より利用者やそれをサポートする人々の意見に応じたデバイスのチューニングが必要になってくる。具体出来に言えば、一般家電製品の中でもユーザから要求の多いTVやエアコンの個別制御への対応である。現状の実験結果では、対応機器が少なく、多くのユーザに利用してもらえないという問題点があった。そこで本年度はより多くの赤外線リモコンで制御される家電製品を対象とし、利用者の拡大を図る。 またWEBカメラを用いた顔認識によるNUIでは、顔の回転角度や頷き角度で外部スイッチの入力としているが、これは一部のタブレットでのみ動作しており、一般的により広く使用されているスマートフォンのOS(例えば、AndroidやiOS)の上では動作が出来ていないという問題点がある。ここままではユーザの使用環境の問題から、実際に使用してもらい、その結果からフィードバック情報を得る事が困難である。そこで本年度はこの問題を解決し、少なくともAndroidの上で動作するカメラを用いたNUIの開発を行う。これが解決できれば、WEBカメラが不必要になり、スマートフォンだけのシンプルなワンデバイスを実現できると考えられる。 更に、今後において本研究で試作したシステムがより広く一般的に利用してもらうためには、システムの製作と同時に周りへのこれらの周知が必要となる。このために勉強会を開催するだけでなく、サポート体制までをも含めた形でSNS等のネットワークを利用した情報提供環境の構築までを行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に次年度使用額が発生した原因の1つは旅費の執行に問題があったためである。これは京都で開催されるATACカンファレンスに発表できるだけの成果が得られなかったためである。具体的には、「USB 制御モジュール」幾つかのデバイスを試作する事ができた。しかし、目標の1つである「1つのデバイスだけで教育と生活支援の両方をサポートするシステム」としては十分な機能が得られていないという問題点があり、このままでは「教育や運動面の向上」といった点には十分対応出来ていないため、ATACというレベルでは発表するだけの内容に到達していなかった。 また、これ以外にも幾つかの物品購入も予定していたが、納品が間に合わず、執行できなかったという経緯がある。今後、このような事態が発生しないように、本年度からより一層の事務処理の確認を行い、納品時期の確認等を徹底していく必要があると考える 「今後の研究の推進方策」で説明したように、本年度は今まで試作してきたシステムをより実用的に改良していく事が必要になる。そのため、より多くのユーザに利用してもらえるよう、多くの家電製品の制御が行えるように対応機種の増加を目指す。このため、ユーザインタフェースの部分により多くの機器データを持たせる必要があるため、新しい組み込み機器のマイクロコントローラを購入し、より多機能化と高速化を試みる。本年度までの繰り越し予算分はこれらの高機能化したマイクロコントローラの購入に予定している。また本年度試作したWEBカメラを用いたNUIをより多くのユーザに利用してもらうために、スマートフォンのカメラの活用を予定している。現在のWEBカメラを用いた入力システムは計算量が多いため、古いスマートフォンでは十分な精度で利用できない。そこでテスト用の新しいスマートフォンを購入し、実機での運用テストを試みる。
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