本年度は、昨年度実施した東京都内および埼玉県内の特別養護老人ホーム、千葉県内の障害児者授産施設にて車いすがかかわるインシデントについての質問紙調査およびヒヤリング調査をもとに車いす利用者の危険予知訓練のシミュレーション場面の作成を行った。結果、16名の職員から文書による研究への同意が得られ、非構造的インタビューを行った。また、無記名による福祉用具の関連するアクシデント用紙が8件回収できた。事故については車いす関連の事故が最も多かった。動作では、移乗移動時の転倒が最も多く、物を拾おうとして転落する場合やフットサポートに足を乗せたまま立ち上がろうとして転倒することが多かった。他、ブレーキのし忘れやタイヤの空気圧の甘さによる制動不良によるインシデントも見受けれた。福祉用具では、車いすについで多かったのは福祉車両であった。利用者の送迎中に車いすのストッパーが外れて腕が車いすと車両に挟まれる事故や、坂道で車両のドアが開いたインシデントも報告された。私たちが行った平成12年の福祉用具貸与事業者へのアンケート調査においても車いす関連事故が多かったが、今回の調査では福祉車両の事故が散見されるようになった。在宅ケアが進む中で高齢者や障害者の送迎で普及してきた福祉車両であるが、送迎における事故対策の充実が明らかになった。現在、本調査に基づき、車いすおよび車いす利用者も利用する福祉車両についても合わせて危険予知訓練の開発に向けてシミュレーションのシナリオを作成中である。
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