身体障害者の中で特に重度肢体不自由者は,日常生活を介護者の手に委ねられているのが実状である.しかし,重度肢体不自由者においても他の障害者と同様に可能な限り自立生活を送ることや,社会参加などに対する願望が強い.また,効果器に障害がある肢体不自由者の場合には,障害や身体機能に応じた操作手段,すなわち福祉機器を操作するためのアクセシビリティ機器が必要となる.アクセシビリティ機器とは障害者用の特殊なキーボード,マウス,スイッチなど,利用者の身体機能に応じて福祉機器の操作を補助する入力装置のことを指す.肢体不自由者においては機器操作の許容量が狭く内包することができないため,機器との間を取り持つアクセシビリティ機器は日常生活関連機器の操作という自立生活や社会参加への重要な接点となる.そのため,福祉機器の導入に際してはアクセシビリティ機器の適用が重要となる.これまで様々なアクセシビリティ機器が開発されているが誤入力や誤動作などの問題点が挙げられている.様々な福祉機器を操作するためのアクセシビリティ機器の安定性が欠けていては,福祉機器を十分に使用することはできない.また,ユーザである肢体不自由者は病状の進行などにより様々な特性があり,個々に適したアクセシビリティ機器の提案が必要となる.そこで本研究はアクセシビリティ機器の安定性向上を目的とし,残存機能である眼球運動を用いたアクセシビリティ機器の提案を行った.
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