研究課題/領域番号 |
24500658
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
川澄 正史 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (40177689)
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研究分担者 |
小山 裕徳 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (00120113)
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キーワード | 健康・福祉工学 / 生体機能評価 |
研究概要 |
高齢者の転倒が社会的問題である.高齢者の転倒は要介護要因の上位にあり,高齢者医療費,介護費用等の高騰を引き起こすなどの問題がある.高齢者の転倒予防には身体機能の観点からは,姿勢制御能の維持向上が重要である.そこで本研究では,姿勢制御能と下肢機能の評価指標の検討を行うことを目的とする. 高齢者の転倒予防には,身体機能の観点からは姿勢制御能,下肢筋力,歩行機能の3要素が重要と考えられる.しかし,これらを定量的かつ転倒リスクを精度よく抽出する手法は開発されていない.本研究では,この中でも姿勢制御能に着目している. 計測は,重心動揺計と小型姿勢制御計測装置の2つを用いた.計測は,静止立位姿勢を保持した状態で行った.それぞれの計測において,サンプリング周波数20Hzとした.解析は足圧中心(Center of pressure: COP)の総軌跡長,矩形面積,左右(x軸)の移動距離,前後(y軸)の移動距離,さらにそれぞれから得られるSDA法のパラメータである.SDA法のパラメータでは,姿勢制御のランダム性を表す拡散係数,および距離のパラメータを使用した. これらの結果の概要として,①従来のCOPのパラメータとSDA法のパラメータは高い相関が得られたこと,②転倒リスクは、拡散係数および距離のパラメータとの関係がある可能性が示唆されたこと,③下肢筋力との組み合わせにより総合的な転倒リスク指標の構築の可能性が示されつつあることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの結果で,バランス機能の観点に基づく大まかな転倒リスク指標の構築ができつつある.すなわち,横断的データに基づいて,姿勢制御能の評価により高転倒リスクのスクリーニングができる基礎的データが揃いつつある.これまでの結果より,姿勢制御能はそれぞれの対象者によりストラテジがある可能性が見えてきた.先行研究では,股関節戦略と足関節戦略が代表的だが,本研究ではさらに踏み込んだ姿勢制御戦略にまで言及できる可能性がある. 以上のように,SDA法およびバランス・姿勢制御能に関する研究成果が概ね順調に集められつつある.
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今後の研究の推進方策 |
高齢者の転倒リスク向上の実際的な要素の抽出とSDA 法を合わせた定量的姿勢制御能評価,および姿勢制御能と下肢機能の維持・向上に関わるパラメータ抽出について研究を推進する.足圧中心(Center of pressure :COP)の計測に用いる据え置き型の重心動揺計は,特定の対象者にしか利用できないこと,また高価な計測器である.一般的な使用を視野に入れると簡便な計測器が求められる.この小型姿勢制御能計測装置の改良を進める. SDA法のパラメータに強く影響を与える因子として,対象者の姿勢,下肢筋力等が考えられる.特に下肢筋力については本研究でも着目し,独自の方法により調査を並行して進めている.下肢の機能推定を支援するため、後方踵部の体表画像をカメラで撮影し,踵骨傾斜角をはじめとした踵部および下腿の角度の画像解析によって足部のパラメータを抽出する簡易的手法の検討も行う.今後の展開として,フィールドで実用・実現可能な姿勢制御能評価および転倒リスク評価指標の構築を並行して解析を進める.以上により,高齢者の健康支援の現場等ですぐに役に立つ指標の構築を目指すこととする.
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次年度の研究費の使用計画 |
本務との日程重なり等で遠方の学会参加が叶わず旅費がかからなかったこと、計上したソフトウェアの更新および物品購入のタイミングが次年度になったこと。 使用金額と使用計画は以下の通り. 使用金額:次年度使用額947,370円,翌年度分として請求した額800,000円 使用計画:消耗品1,097,370円(計測装置の試作にかかわる機器,機材,部品等.通信機能構築にかかわる物品,周辺機器,ケーブル,ソフトウェア等).旅費200,000円(学会発表,調査出張旅費).謝金250,000円(実験協力者への謝金).論文投稿料200,000円
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