高齢者の転倒が社会的問題である.高齢者の転倒は要介護要因の上位にあり,高齢者医療費,介護費用等の高騰を引き起こすなどの問題がある.高齢者の転倒予防には,身体機能の観点からは姿勢制御能,下肢筋力,歩行機能の3要素が重要と考えられる.本研究では特に,姿勢制御能の維持向上に着目し,姿勢制御能と下肢機能の評価指標の検討を行うことを目的とする. 計測は,下肢筋力の観点から足指力(膝下の筋力を評価)と膝間力(股関節内転・外転筋力を評価),およびバランス機能の観点から開眼静止立位時の足圧中心(Center of pressure :COP)を対象とし,解析を行った.COPの総軌跡長,矩形面積,SDA法のパラメータを評価指標とした.また,運動指導により足指力,膝間力が向上した例において,運動指導前後のCOPを解析したところ,向上はSDA法パラメータでも評価することができた.このように,下肢筋力とSDA法等を用いることで転倒リスク評価を行うこと,つまり足部機能の向上の変化をとらえることができた. また,下肢の機能推定を支援するため,後方踵部の体表画像をカメラで撮影し,踵骨傾斜角をはじめとした踵部および下腿の角度の画像解析によって足部のパラメータを抽出する簡易的手法の検討を行った.フィールドにおける速やかな姿勢制御能評価および転倒リスク評価を実現可能とするに有用と考えている.踵骨傾斜角,下腿傾斜角について解析を行い下腿形状と足圧分布の関連性を検討し,足圧分布データから判断される偏平足や浮き指といった足部異状について,画像のみで簡易的な判断が可能か検討した.被験者を低アーチ群,偏平足群,浮き指群,正常群の4群に分け角度の解析を行った結果,特に扁平足群のデータに違いがみられている.今後,撮影環境を見直し,角度解析を自動化することで足部のパラメータを抽出する簡易的手法になると考えられる.
|