研究課題/領域番号 |
24500659
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
河西 理恵 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (60458255)
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研究分担者 |
水島 岩徳 東京工科大学, 医療保健学部, 助教 (20590988)
武田 朴 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40583993)
武藤 友和 東京工科大学, 医療保健学部, 助教 (50583986)
木村 裕一 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (60205002)
縄井 清志 つくば国際大学, 医療保健学部, 教授 (50458254)
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キーワード | 福祉・介護用ロボット / リハビリテーション / 動作分析 |
研究概要 |
本研究の目的は、要介護高齢者に対するロボットスーツHAL(以下:HAL)を用いたリハビリテーションプロトコルの考案とその有効性について検討することである。その第一段階として、HALがヒトの立ち上がり動作に与える影響について、小型加速度計と筋電計を用いて比較する研究計画を立案した。新たな研究協力施設となった医療法人博仁会志村大宮病院の協力のもと被験者を募り、平成25年5月~9月にかけて脳卒中片麻痺患者5名のデータ収集を行った。また、平成25年9月に当初からの協力施設である善光会で脳卒中片麻痺患者1名のデータを収集した。重力加速度を利用した立ち上がり動作の姿勢変化、ビデオ画像による頭頚部の運動軌跡の変化、および筋電図を用いた筋活動量の変化についてHAL装着の有無で比較し、さらに健常者の立ち上がり動作について解析し患者データと比較した。 データ解析の結果、健常者に比べ患者の動作は再現性に欠けるが、HAL装着により動作の再現性が向上する傾向が示された。また、前方への重心移動が増加し健常者の立ち上がり動作パターンに近くなる傾向が示された。一方、全例においてHAL装着により立ち上がりに要する時間が著しく延長し、片麻痺患者に多い反動を利用した立ち上がりパターンから、重心を座面から足部上に移動し、ゆっくりと立ち上がるパターンに変化する傾向が示された。 これらの研究成果を平成25年9月に九州大学で開催された生体医工学シンポジウム、および同年12月にシンガポールで開催されたICBME学会にて報告した。さらに、平成26年5月にパシフィコ横浜で行われる第49回日本理学療法学術大会にて報告予定である。また、現在学術論文を執筆中であり今年度上半期末に投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、HALを用いた有効なリハビリテーションプロトコルを開発し、その有効性について検討することである。そのためにはヒトの動作や運動を客観的に評価できる指標が必要だが、高価で複雑な計測機器を臨床現場で使用することはマンパワーやコスト面から容易ではない。そうした現状を踏まえ、本研究の目的として、筋電計と加速度計を一体化した小型インターフェイスとビデオカメラを用い、臨床現場でも簡便かつ安価に定量的なHALの動作分析が行える計測手法を立案し、その効果を確認することとした。 結果は本研究の方法により定量的な計測結果に基づくリハビリテーションプログラムの立案や効果判定が臨床現場においても実現可能であることを見いだすことができ、この点については概ね順調に研究が進んだと考えている。 一方、課題として健常者の動作は比較的再現性よく安定しているのに対し、脳卒中患者の動作は患者間および患者内ともに再現性に欠け不安定であり、Brunnstrom recovery stage等の運動麻痺の指標が同カテゴリーに属する患者間においても実際の動作パターンは大きく異なっており、データの解析方法については再検討が必要であることがわかった。現在、比較的安定した動作遂行が可能である健常者との比較から脳卒中患者の動作の再現性を定量的に評価し解析する手法について検討を行っている。 また被験者のリクルートが予定通りに進まず症例数が増えていない。この原因はHAL装着に伴う患者の疲労感やHALの重さによる負担感が主な原因であると思われる。この点についてはデータ収集のプロトコルを改善し患者の負担軽減に務めていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初は歩行を含むHALのリハビリテーションプロトコルの開発を予定していたが、これまでの研究から計測が容易な立ち上がり動作の定量的な評価指標の確立を行った後、歩行について検討を行うことにした。本研究では筋電図と加速度波形の解析に動画を用いる必要があるが、歩行の動画解析を行うには三次元動作解析装置のような大型機器が必要であり、現在協力が得られている臨床施設では実施は困難である。一方、立ち上がり動作であればこうした機器を使用しなくても実施可能なため、立ち上がり動作の解析を中心に研究を進めることとした。 また、様々な健常者の立ち上がり動作のデータを増やし健常な動作パターンを把握すると同時に臨床例を増やすためHALの被験者数を増やすことを検討しているが、HALの装着に協力して頂ける被験者のリクルートは容易でないため、引き続き協力施設を増やす努力を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金(約108万)が生じた理由として、平成24年度に購入した筋電図・加速度記録装置(購入金額:82万円)が当初の予算申請額(170万円)より安価で購入できたこと、また、平成25年度に心拍・脈拍等の自律神経系の生体信号計測機器の購入(約100万)を検討していたが、研究の進捗状況の変化により平成25年度の購入を見送ったことが挙げられる。 平成26年度の使用計画として以下の内容を検討している。1.HAL装着時の負荷および疲労を定量評価するための心拍・脈拍等の生体信号計測器(約100万)の購入。2.論文投稿に関する諸経費(論文投稿費・英文校閲費)(約10万)。3.筋電電極などの消耗物品費(約10万)を予定している。
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