研究課題/領域番号 |
24500662
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
大橋 篤 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (30310585)
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研究分担者 |
中井 滋 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (20345896)
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キーワード | 血液透析 / 生体適合性 / クエン酸添加透析液 / 肝臓細胞 / 骨格筋細胞 / グリコーゲン代謝 / 抗酸化作用 |
研究概要 |
血液透析(HD)患者は、体外循環ディバイスと血液との接触や透析液に含まれる酢酸(AA)の逆拡散による白血球刺激などで酸化ストレス亢進状態にあり透析アミロイドーシスなどの合併症を招きQOLが低下する。我々は透析液に添加されるAAの代替剤であるクエン酸(CA)が細胞内グリコーゲン合成や酸化ストレス抑制に寄与すると推測している。初年度は、AAまたはCAを透析液濃度に調整したE-MEM培養液でヒト肝癌細胞 (HepG2)株を培養したところCA添加株の細胞内グリコーゲン量はAA添加株に比し低値となった。そこで平成25年度は、正常ヒト骨格筋細胞(SkMC)株を用い、透析液(AAおよびCA添加)と培養液を混和した溶液で培養実験を試み、細胞内グリコーゲン量の測定と解糖系、グリコーゲン合成系、ペントースリン酸系、脂質合成系など代謝関連酵素の遺伝子発現をDNAマイクロアレーの結果を基に定量RT/PCR法で測定した。その結果、CA透析液混和培養に比しAA混和培養は細胞内グリコーゲン量が20%高値且つグリコーゲン合成系酵素も25%程高値となった。さらに、ペントースリン酸系酵素とGSH合成酵素も同程度高値となりCA透析液の酸化ストレス抑制への関与を推測した。我々はHD患者の抗酸化療法とQOL改善の関連性について検討し、抗酸化処理透析膜がアルブミンの酸化修飾を抑制し且つSF-36によるQOL評価で全身健康感の改善に寄与することを明らかにし発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでにヒト肝癌細胞と正常ヒト骨格筋細胞を用いた培養実験でクエン酸の細胞内グリコーゲン装填効果を検討したが、肝癌細胞と骨格筋細胞で乖離した結果となった。これは肝癌細胞という特殊な代謝回転の細胞であることが原因と考えている。そこで、正常の肝細胞で添加実験を試みたが、継代培養が不可能で細胞の代謝産物や分子レベルの検討に必要な試料が得られず結果が得られていない。また、個体レベルの運動生理学的検討として、動物実験で透析液(AAまたはCA添加)をラットの腹腔へ留置し、遊泳時間で持久力能を評価し、AA群に比しCA群で遊泳時間が長い事を確認したが、分子生物学的な証明が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
早急に正常ヒト肝細胞株または骨格筋細胞株用い、各種酸を混和した溶液液による培養実験を行い糖代謝関連の遺伝子発現および代謝産物の定量評価を行う。また、酸化ストレスマーカーの測定も追加する。次に、個体レベルの研究として、昨年度実施したマウスの遊泳持久力評価得た組織を用い、糖代謝関連の分子生物学的実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養実験で ヒト細胞内に対する酢酸とクエン酸のグリコーゲン産生能を比較したところ、初年度に検討したヒト肝癌細胞株の結果と本年度行った正常ヒト骨格筋細胞の結果が乖離しており、正常ヒト肝臓細胞を用いた分子生物学的実験を行う必要がある。したがって、正常細胞株や細胞培養の消耗品ならびに遺伝子発現測定関連の試薬などを購入する必要がある。さらに、次年度は最終年度のため、実研成果をまとめ、論文発表する必要がある。 透析液pH調整剤の正常ヒト細胞に対するエネルギー代謝の影響評価をまとめるために以下のように研究費を使用する。①.正常ヒト骨格筋細胞株と肝細胞株および消耗品の購入。②.定量RT-PCR法による遺伝子発現測定に関するmRNA抽出試薬やプローブなどの試薬の購入。③.論文発表用の必要経費として校正料などに使用する。
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