研究課題/領域番号 |
24500667
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
奥野 竜平 摂南大学, 理工学部, 教授 (90294199)
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研究分担者 |
赤澤 堅造 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30029277)
赤澤 淳 明治国際医療大学, 保健医療学部, 講師 (10460742)
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キーワード | 義手 / 筋電図 / 電気刺激 / せん断応力 / 歪ゲージ / 仮現運動 |
研究概要 |
本研究においては,義手による物体把握時の感覚情報と把持状態を使用者に伝達する物体把持情報伝達機能を備えた筋電義手の開発を行うことを目的とする.本年度に得られた成果を以下に要約する. (1) 義手人工手掌部におけるすべりと把持力検出センサの試作: 義手人工手掌部におけるすべりと把持力検出センサの改良を行った.昨年度試作した十字型の台形状センサでは円筒握りにおいて物体把握時に生じるせん断応力によりセンサが台座から剥離することが問題となった.そのため,堅牢さを増すように,1軸の台形型センサを90度回転させ,重ねるように設置したタイプに改良を行った.また,2つの1軸センサからの出力から,せん断応力の方向,大きさが検出可能なモデルを定式化した. (2)電気刺激を用いた刺激提示システムの試作: 視覚によるフィードバックが効かない場所において,義手を用いて物体把握をした場合に使用者にフィードバックする情報を検討した.その結果, 3種類の義手開閉角度と5種類の把握状態を伝達することとした.これにともない,皮膚電気刺激を用いた8種類の仮現運動刺激パターンを提案した.前腕部を対象とした刺激提示実験を行い,識別可能であることを示した. (4)多チャンネル筋電図処理方式の開発:前年度に検討した独立成分分析(ICA)を用いた手法を改良し,肘関節屈曲動作時における上腕二頭筋の筋電図を計測し,運動単位の波形分離が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
義手人工手掌部に貼付するためのセンサを改良し,せん断応力の大きさ,方向の推定が可能であることを示した.これにより人工手掌部に備えさせるセンサのプロトタイプが試作できたものと考えられる.また,感覚情報伝達システムにおいては,物体把握時に使用者に伝達が必要な情報の種類を検討し,8種類の電気刺激パターンの識別が可能であることを示した.筋電図処理については筋電図に対し独立成分分析(ICA)を用いた波形同定手法を改良するとともに,筋長が変化する動作時において本手法が適用可能であることを示した.このことから,本研究では本年度予定した研究内容を概ね遂行することできたものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24および25年度の研究成果を元に次年度以降,下記の事項について研究を遂行する. (1)義手人工手掌部の試作:把持力,すべりの検出可能なセンサを備えた義手人工指先部,手掌部を試作する.義手の示指,中指および母指の手掌部に前年度試作したセンサを備えた人工手掌部を試作する. (2)物体把持情報伝達システムの試作:前年度決定した刺激パターンをもとに,物体の把持情報を使用者に伝達するシステムを試作する (3)多チャンネル筋電図処理方式の開発: 前年度に引き続き,多チャンネル筋電図処理手法を改良するとともに,運動時の筋電図から単一運動単位波形の同定を行い,運動単位の活動様式を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
多チャンネル筋電図処理法の開発において,本年度は高い演算能力を得るために解析用計算機を購入した.しかし,計測された大量のデータを保存するためには大容量かつデータの消失の可能性が少ないRAID機能を備えた外部記憶装置が必要であるが,本年度の残金(36,955円)では購入が不可能であったため使用しなかった. 2013年度の残額と2014年度予算を合算し,大容量の外部記憶装置を購入する予定である.
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