我が国の視覚障碍者は全国でおよそ30.1万人(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部調べ)、そのうち全盲は約11万人、弱視は約19万人にのぼる。特に近年は、糖尿病性網膜症による中途視覚障碍者の割合が高くなっている傾向がある。一方、点字の使用は視覚障 碍者全体の9.2%であり、理療教育の課程に入所後も、授業時の点字使用者のPC使用率は10.7%に留まり、筆記具未使用率は50.0%にのぼっている。このため、学習困難に陥るケースも後を絶たず、中途失明の視覚障碍者が電子データとして施術録に残す方法も確立していない。 本研究では、中途失明により理療教育機関および鍼灸医療機関で就業を志す中途視覚障碍者の就業支援と高度情報セキュリティ機能を融合した統合型ペン入力理療用電子カルテシステムの実用化を目的とする。点字の修得が困難な視覚障碍者に対してペン入力技術を利用したペンインタフェースの導入により、施術における医療筆記を実現した。さらに、従来の電子カルテ導入時における最大の問題点であった理療記録の有効利用と個人記録の漏えい、改ざん防止という相反する2つの課題に対して、ペン入力によるオンライン筆記情報を用いた個人認証技術を新たに提案し、クラウドコンピューティング機能の導入による理療用ペン入力システムの実用化が可能となった。特に、移動端末における文字入力を考慮し、修正機能およびキーワード検索による関連ファイルの自動検索機能などの実装化が医療現場における有用な機能として効果があることが確認できた。
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