聴覚障害者が補聴器や人工内耳などの聴覚補助器を用いて豊かな音声コミュニケーションを実現するためには,話者の属性,話者の感情や態度などの非言語・パラ言語情報が聴覚補助器で適切に伝達される必要がある.そして,非言語・パラ言語情報を適切に伝達する聴覚補助器を開発するためには,これらの情報がどの程度正確に伝達されているかを評価するための尺度が必要となる.そこで,本研究では,聴覚補助器による非言語・パラ言語情報の伝達性能を評価するための尺度の構築を目指している. この目的のため,話者感情同定テスト,発話者識別テスト,話者情報判断テストのプロトタイプを構築した.話者感情テストは,Ekmanの基本6感情+「中立」の7感情をモーラ数およびアクセント型を考慮した9語で,男女各1名が発話した音声から構成される.発話者識別テストは,2音声を連続して呈示し,その話者が同一かどうかを判断させるテストである.また,話者情報判断テストは,話者の性別と年齢層を判断させるテストである. 本年度は,これらのテストのプロトタイプの得点が,聴覚補助器の特性に応じてどのように変化するかを確認した.その結果,それぞれの聴覚補助器の特性に応じた得点が得られ,本テストが聴覚補助器の評価に有効であることが示された.
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