本研究は、自転車運転者の注視点移動パターン及び運転パフォーマンスと能動的注意との関連性を検討し、自転車事故発生要因の科学的理解ならびに安全な自転車利用の促進に役立てようとするものである。26年度では、被検者に対する教示・刺激提示と注視点移動及び脳酸素動態の同時計測をオンラインで行うため、ハードウエア及びソフトウエアを一体化するシステムを構築することを目指した。前年度にひき続いて専門家の協力を仰いだ。その結果、3種類の音刺激をランダムな間隔・比率で提示するシークエンスと、3チャネルの脳波及び音刺激提示データ及び反応スイッチ作動データをリアルタイムに収録するシークエンスを作成し、これらを同時駆動させるシステムを構築することができた。 前年度までの屋外でのアイカメラ実験では、注視点移動記録と同時に前額部脳酸素動態データを収録したが、脳酸素動態データに日光の影響が顕著であるため、十分な遮光を施す必要があった。また、アイカメラで瞳孔を検出するための赤外光が脳酸素動態データに対してノイズとなって混入することが技術的な課題として指摘された。この課題については、オフラインでのデジタルフィルタ処理を検討する必要がある。 研究期間全体を通じ、注視点移動と能動的注意との関係を検討するという当初の目的は達成されなかったが、完成されたシステムを活用して研究を継続する予定である。
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