本研究は、幼児の身のまわりで起こったヒヤリハットの発生状況ならびに原因について詳細に分析し、特に運動能力の未発達が原因と考えられる事例を参考に、それらを未然に防ぐ評価方法、および有効な運動遊びを提案することを目的とした。 各保育園のヒヤリハット事例をまとめるとともに、“今の子どもの気になる点”の分析を試みた。その結果、昔に比べ「姿勢が悪い」「バランスを保つのが下手」「からだの操作が未熟」といった点が注目された。次いで転倒しやすい幼児の体力的特徴と生活行動特性についても検証した。男児は体支持持続時間、20m走、およびテニスボール投げに有意差が認められ、転倒群が非転倒群に比べ劣っていた。一方の女児は立ち幅跳びのみ転倒群が劣っていた。生活行動特性については「注意力・判断力が鈍い」「咄嗟の動きができない」「姿勢が悪い」といった特徴があることが示唆された。 転倒回避に重要な上肢および全身の反応時間と運動遊びとの関連について検討した。その結果「鬼ごっこ」「サッカー」等は各反応動作の改善に有効で、特に一つの活動だけでなく多くの異なる運動を実行することが重要であることが示唆された。テレビゲームとの関連も検討したが、視覚情報に対する上肢反応には有効だが、全身敏捷性には効果が無いことがわかった。また、運動遊びを行う際の履物にも注目した。草履式鼻緒サンダルは土踏まず形成、立位重心動揺および立位姿勢改善に効果的であることがわかった。 子ども達に運動遊びの大切さを知ってもらうため、保育士と協力し、上記知見を盛り込んだ運動遊び啓発の紙芝居「参上!つちふまず忍者」を制作した。県内の保育園や図書館に配布し『読み聞かせ』で活用してもらっている。さらに、動的バランス能力を高める運動遊具として、木と竹の自然素材を使った “揺らぎ平均台”を制作した。実用新案権を取得しているが、今後各方面での活用を予定している。
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