本研究は幼児期の日常的な身体活動量が認知機能の発達にどのような影響を及ぼすのかについて検討を試みた。被験者は4歳から6歳を中心とし、総計400名弱のデータ数となり、中規模的な研究となった。本研究の当初の検討項目であった、子どもの身体活動量のデータ計測については、データが上手くとれていない場合やデータの信憑性が疑われるケースが続発し、測定が非常に困難であったことから、特に前頭前野の機能発達について焦点を当てることとした。前頭前野の機能発達については、特に単一の実行機能の発達については多くの研究が見られるが、これらを包括するより高次の実行機能の発達については未だ不明な点が多い。現在のところ、このような包括的に実行機能を操作する脳の働きがどの時期に生じ、それがどのような軌跡をたどって成長していくのかについて不明なだけでなく、このような機能を評価しうる認知課題も見当たらない。したがって、本研究では、単一の実行機能を調整する包括的な脳の働きを評価する課題の作成を試み、4歳~6歳まで、および成人を対象として研究を行った。この結果、4歳では包括的な調整機能の萌芽はみられないものの、単一の実行機能が十分に形成されていること。さらに、6歳では包括的な調整ができるようになり、6歳後半では成人と似たようなレベルまで成長するという結果をえることができた。このように、本研究では、包括的実行機能調整の萌芽時期および基礎形成の時期として6歳が臨界的期間となることを、最初に明確に示す結果となった。
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