研究課題/領域番号 |
24500686
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
小野寺 昇 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (50160924)
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研究分担者 |
片山 敬章 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (40343214)
荻田 太 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (50224134)
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キーワード | 自転車エルゴメータ / タンデム自転車エルゴメータ / 酸素摂取量 / 心拍数 / 呼吸交換比 / 血圧 / 踏力 / 変動係数 |
研究概要 |
タンデム自転車エルゴメーターを開発した。タンデム自転車エルゴメーターの最大運動負荷装置としての妥当性を求めた。評価項目は、最高心拍数及び最高酸素摂取量とした。対象者は、健康な成人男子16名(年齢26歳、身長174cm,体重71kg)であった。川崎医療福祉大学倫理委員会の承認を受け、倫理指針に従い対象者の同意を得た。最高酸素摂取量が同程度の対象者2名を組み合わせ、タンデム自転車エルゴメーター最大運動を実施し、二人の酸素摂取量をそれぞれ求めた。測定条件は,一人乗り自転車エルゴメーター条件(シングル条件)、タンデム自転車エルゴメーター前乗り条件(タンデム前条件)および後乗り条件(タンデム後条件)とした。心拍数は胸部双極誘導を用いて、酸素摂取量は、ダグラスバック法から求めた。 シングル条件の最高酸素摂取量(ml/kg/min)と心拍数(bpm)は,43.8±8.7、189±7、タンデム前条件の最高酸素摂取量(ml/kg/min)と心拍数(bpm)は、44.7±7.4、192±12、タンデム後条件は、44.1±9.3、191±8であった。条件間に有意な差はなかった。最高酸素摂取量におけるシングル条件に対するタンデム前条件の変動係数(%)は、6.1±4.6、タンデム後条件の変動係数(%)は、5.5±3.6であった。心拍数におけるシングル条件に対するタンデム前条件の変動係数(%)は、2.7±2.7、タンデム後条件の変動係数(%)は、2.5±1.8であった。先行研究は、自転車エルゴメータ運動の日内変動を平均5.5%,日差変動を3.0-10.0%と報告した。タンデム自転車エルゴメータの最大運動負荷装置としての妥当性が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最高酸素摂取量が異なる者を組み合わせ、タンデム自転車エルゴメーターを用いた最大運動時における運動パフォーマンス変化を明らかにすることを目的とした。対象者は、健康な若年男性14名であった。最高酸素摂取量が約10%異なる対象者を2名組み合わせた(最高酸素摂取量が高い対象者:高体力レベル群、低い対象者:低体力レベル群)。測定条件は、一人乗り自転車エルゴメーター条件(SIN条件)、タンデム自転車エルゴメーター前乗り条件(FRO条件)および後乗り条件(REA条件)とした。測定項目は、運動時間、最大運動時の心拍数、酸素摂取量およびRPEとした。両群における最大運動時の心拍数、酸素摂取量は、条件間に有意な差はみられなかった。低体力レベル群におけるFRO条件の運動時間は、SIN条件と比較して有意に延長した(p<0.05)。最高酸素摂取量が異なる者を対象としたタンデム自転車ERGを用いた最大運動は、低体力者の運動パフォーマンスを向上させる可能性が考えられた。 タンデム自転車は、2人乗りの自転車である。前乗りをパイロット、後ろ乗りをコ・パイロットとよぶ。今回、「サイクル耐久レースin岡山国際サーキット2013」に参加する機会を得た。タンデム自転車走行時における前乗りおよび後乗りの負担度を明らかにすることを目的とした。対象者は健康な成人男性2名(A(前乗り)、B(後乗り))であった。コースは、1周3.7 kmであった。心拍数から推測したタンデム自転車走行時の推定最高酸素摂取量は、A:43 ml/kg/min(72 %)、B:28 ml/kg/min(64 %)であった。Bの推定最高酸素摂取量は、Aに比較し低値を示した。心拍数から推測したタンデム自転車走行時における最高酸素摂取量の変化は、前乗りへの負担度が高いことを示唆する。前乗りの持久的な体力の負担度は、後乗りより高いことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
タンデム自転車エルゴメータにおける踏力と酸素摂取量の関連性を求める。これまでの体力評価は、運動負荷強度に対する心拍数の応答性から推測することがスタンダードとなっている。踏力と酸素摂取量の関連性が明らかになれば踏力量から体力を推測することが可能となる。特に対象者2人が1つの負荷を共有するタンデム自転車エルゴメータの乗り手相互の負荷の分配を明らかにすることが可能となる。つまり、踏力から乗り手相互の依存性を求める。 対象者は、健康成人男性40名程度を予定する。それぞれの最大酸素摂取量は自転車エルゴメータを用いて求める。最大酸素摂取量の40% ・60% ・80% の負荷を加えたタンデム自転車エルゴメータを15分漕ぎ、その時の踏力と心拍数・酸素摂取量の関連性を求める。つまり、運動負荷に対する呼吸循環機能の評価を行う。指標として心拍数、酸素摂取量、血圧、呼吸交換比を用いる。心拍数は、胸部双極誘導から求める。酸素摂取量は、ダグラスバック法から求める。血圧は、水銀式血圧計を用いて求める。呼吸交換比は、ダグラスバック法で分析した酸素濃度と二酸化炭素濃度の比から求める。Passive movementの評価は、踏力計を用いて行なう。踏力計は、ペダル上面に設置し、踏力を電位変換することにより求める。このシステムは、すでに設置済みである。 踏力と酸素摂取量の関連性が明らかになれば、左右の下肢における酸素摂取量を個別に評価できることになる。この知見から、高齢者や低体力者の健康づくりやスポーツ障害等からのアスレティックリハビリテーションの方法論としてのタンデム自転車エルゴメータの応用が可能となる。これらの成果は、ヨーロッパスポーツ科学会議(ECSS)にて発表し、国際学会誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
フィールド実験におけるタンデム自転車の速度、位置、高低差と心拍数の関連性を求めるために、GPSと心拍数が同期するシステムを考案するため、試作を繰り返した。そのため、適切なGPSの確定に時間を費やした。すでに、適切なGPSの選定を終え、発注の予定である。 フィールド実験におけるタンデム自転車の速度、位置、高低差と心拍数の関連性を求めるシステム(GPS)を導入し、フィールド実験として岡山国際サーキットにおける2時間耐久レースに2台出場させ、体力レベルの異なる乗り手の実験室レベルの資料との一致性をフィールド実験にて検証する計画を立てた。この時に1台の自転車では対照群を設定することが難しいため、新たにタンデム自転車を購入する。最大努力と酸素摂取量との関連性について、国際学会(ECSS、2014)で発表する。これまでの知見をまとめるにあたり、助言を得るために講演会を開催する。これらの計画を実行するために経費を執行することとする。
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