思春期前にあたる幼児期から児童期前半の子ども(3-8歳)における、下肢の筋の量的発育と、疾走能力、疾走動作の関係について検討した。結果は以下の3本の論文として公表した。 1)3-8歳児における下肢筋厚の発育と性差「日本体力医学会、体力科学、vol61(5)」:3-8歳児561名を対象に超音波法により下肢の筋厚を測定し発育の性差、部位差を検討した。下肢筋厚は年齢と共に増加した。児童期前半では男児は大腿後部、女児は大腿前部で高い値が観察され、発育の性差が認められた。部位別の発育量は女児は全ての部位において一定の速度で発育するのに対し、男児の下肢筋群の間には発育の部位差が存在した。
2)3-8歳児における下肢筋厚の発育と疾走能力との関係「日本体力医学会、体力科学、Vol62(2)」:3-8歳の子どもにおいては形態の発育に加えて、下肢の筋厚の発育がストライドの増大に貢献し、疾走能力に影響を及ぼすとことが示唆された。男児の 8歳群では、体格や筋の量などの形態的要素より下肢の筋力や パワー、または疾走動作などの他の要素の向上が疾走能力に影響を及ぼすと考えられた。それに対し女児は全ての年齢群で下肢筋厚と疾走能力に有意な相関が認められ、生得的な下肢の筋量が疾走能力に影響を及ぼすことが示唆された。
3)児童期おける下肢筋厚が疾走動作に及ぼす影響「日本体力医学会、体力科学、vol62(5)」:思春期前の子どもにおいて、下肢の筋群の量的発育は疾走動作に影響を与えることが示された。また、8歳前後からピッチに影響を及ぼし始めることが示唆された。さらに男児は下肢の筋群の量的発育は疾走動作に影響を与えるが、疾走能力には直接的に影響を及ぼさないことが示唆された。
|