研究課題/領域番号 |
24500688
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
山崎 文夫 産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (80269050)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 皮膚血流量 / 冷受容器 / 皮膚温 / 温度感覚 |
研究概要 |
皮膚を局所的に冷却すると、冷却部の皮膚血管は速やかに収縮する。皮膚表面麻酔薬を用いて感覚神経機能を遮断すると、薬剤投与部の皮膚血管は冷却刺激に対して一旦拡張してから緩やかに収縮することが報告されている。これは局所冷却時の皮膚血管収縮機能に感覚神経が関与ことを示唆しているが、感覚神経末端の冷受容体機能の役割は明らかでない。本年度は、皮膚寒冷刺激時の皮膚血管収縮機構におけるtransient receptor potential チャネル(TRPM8)受容体機能の関与について明らかにすることを目的として研究を行った。健康な成人10名を対象として、下腿部の皮膚表面に冷受容体TRPM8チャネル活性刺激剤であるメントール(0.2、0.5、および1.0%)を塗布した。コントロール部にはメントールを塗布しなかった。被験者は中性温度環境下(29℃)で仰臥位安静を保ち、メントール塗布部および非塗布部の局所皮膚温を、温度コントロール用プローブを用いて35℃から25℃まで5分毎に2.5℃ずつ低下させた。局所温度コントロール用プローブの中心部での皮膚血流量をレーザードップラー法によって測定した。いずれの冷却部位においても、皮膚温の低下に伴って冷感覚は増大した。同一皮膚温で比較するとメントール塗布部の方がコントロール部よりも冷感覚が強かった。冷却前のベースライン血流量は、いずれの濃度のメントール塗布によっても変化しなかった。いずれの濃度のメントール塗布部においても、皮膚温の低下に伴って皮膚血流量は有意に減少し、メントール塗布部の血流減少反応はコントロール部のそれと異ならなかった。これらの結果から、直接的な皮膚冷却による皮膚血管収縮に冷受容体活動の増強は関与しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の遂行に必要な実験機材を購入し、当初の計画通りに研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
近年、職場、公共施設、一般家庭において冷房設備が普及し、夏季であっても日中の冷えが問題になってきている。日常生活における「冷え」の愁訴は男性より女性に多く、「冷え」は体幹部よりも下肢末端部で強く感じるとされている。しかし冷え性者の寒冷暴露中の足部の温冷感や皮膚血管運動機能について検討した研究は少なく不明な点が少なくない。そこで今年度は、冷え性の女性10名(冷え性群)と冷え性ではない女性10名(非冷え性群)を対象として全身冷却および下肢の局所冷却時の下肢皮膚血管収縮機能と温度感覚機能について検討する。全身冷却は人工気候室において室温を29.5℃から23.5℃まで-0.1℃/分の速度で低下させることにより行う。局所冷却は下腿部および足背部のそれぞれ皮膚温を局所温度刺激装置を用いて35℃から25℃まで段階的に低下させることにより行う。実験中は、皮膚温(前額、胸、前腕、手背、大腿、下腿、足背、指先)、代謝量、深部体温、身体3か所の皮膚血流量(下腿、足背、足指)、血圧および心電図を測定する。全身と足先の温冷感をビジュアルアナログスケールを用いて5-10分毎に測定する。全身あるいは局所の皮膚冷却による皮膚温低下(入力)と皮膚血管収縮反応(出力)および皮膚温低下(入力)と温度感覚(出力)のそれぞれの入出力関係を群間で比較することにより、冷え性女性における皮膚冷却時の皮膚血管収縮および冷感覚受容の機能的特性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
電極、テープ、熱電対などの実験消耗品代として5万円、24年度の研究成果を米国ボストンで開かれる実験生物学会議で発表するための旅費として30万円、被験者への謝金として20万円、大学の施設使用料および英文校正費用として5万円(合計60万円)を、それぞれ使用する計画である。
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