研究課題/領域番号 |
24500688
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
山崎 文夫 産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (80269050)
|
キーワード | 皮膚血流量 / 冷受容器 / 皮膚温 / 温度感覚 |
研究概要 |
近年、職場、公共施設、一般家庭において冷房設備が普及し、夏季であっても日中の冷えが問題になってきている。日常生活における「冷え」の愁訴は男性より女性に多く、「冷え」は体幹部よりも下肢末端部で強く感じるとされている。しかし冷え性者の寒冷暴露中の足部の温冷感や皮膚血管運動機能について検討した研究は少なく不明な点が少なくない。そこで今年度は、冷え性の女性10名(冷え性群)と冷え性ではない女性9名(非冷え性群)を対象として全身冷却時の下肢皮膚血管収縮機能と温度感覚機能について検討した。 全身冷却は人工気候室において室温を29.5℃から23.5℃まで-0.1℃/分の速度で低下させることにより行った。実験中は、皮膚温(前額、胸、前腕、手背、大腿、下腿、足背、指先)、代謝量、深部体温、身体3か所の皮膚血流量(前腕、下腿、足背)、血圧および心電図を測定した。全身と足先の温冷感をビジュアルアナログスケールを用いて10分毎に測定した。全身冷却による皮膚温低下(入力)と皮膚血管収縮反応(出力)および皮膚温低下(入力)と温度感覚(出力)のそれぞれの入出力関係を群間で比較することにより、冷え性女性における寒冷暴露時の皮膚血管収縮および冷感覚受容の機能的特性を検討した。 いずれのグループにおいても深部体温は寒冷暴露によって有意に変化しなかった。寒冷暴露中に平均皮膚温は2グループで類似して低下した。いずれのグループにおいても代謝量は寒冷環境下で増加する傾向がみられ、その増加は冷え性群の方が小さかった。皮膚温の低下に対する全身と足先の冷感覚の感受性は、冷え性群の方が非冷え性群よりも高かった。皮膚血管収縮反応の感受性は、前腕部および下腿部では両者で差がなかったが、足背部では冷え性群の方が非冷え性群よりも有意に高かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究機関の変更のための準備などにより年度の後半に予定していた実験ができなかったため、当初の予定よりも進度がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、若齢女性における全身寒冷暴露時の足部の反射姓皮膚血管収縮反応は、冷え性者の方が非冷え性者より大きく現れることを明らかにした。しかしながら、1)冷え性者における足部皮膚血管収縮反応の亢進が局所冷却に対する反応においても生じるのか、2)冷え性者の下肢の冷覚感受性の亢進は冷受容体機能の違いによるのか、については明らかではない。これらの不明点について検討するために、中性温度環境(29.5℃)下で、下肢(下腿、足背)のメントール塗布部と非塗布部を局所的に冷却している時の皮膚血流量や温度感覚を冷え性者と非冷え性者との間で比較する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
所属研究機関の変更に伴う準備のために、当初予定していたすべての実験を25年度中に行うことができなかったため。 温度感覚計測器を購入するための備品費として45万円、電極、テープ、熱電対などの実験消耗品費として33万円、25年度の研究成果を長崎市で開かれる日本体力医学会で発表するための旅費として5万円、被験者への謝礼および英文校正費などの謝金として8万円、学会参加費などその他の経費として2万円を、それぞれ使用する計画である。
|