研究課題/領域番号 |
24500689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
崎原 ことえ 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的障害研究部, 流動研究員 (40423115)
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研究分担者 |
鈴木 秀次 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40137964)
奥住 秀之 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70280774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 適応的歩行 / 小児 / 自閉症スペクトラム障害 |
研究概要 |
本研究では適応的歩行に関わる認知の神経基盤を明らかにすることを目的とした.初年度は適応的歩行に関わる視覚情報の認知に関して,特に視覚情報の時間・空間的統合について小児を対象に実施する視覚課題の構築を行うことを目的に第1~3研究を実施した. 第1研究ではコヒーレントモーションの方向弁別課題を作成し,健常成人を対象に複数のコヒーレント比率条件の中から最適な条件を探索した.結果から,コヒーレント比率が増えると方向弁別の正答率が高くなり反応時間には差がなかったことから,正答率には方向検出に関わる視覚情報処理が反映されると示唆された.またすべて同じ方向に動く条件(A条件)下でも正答率に個人間差が認められたため,A条件で方向弁別の検出に関わる視覚情報処理の個人間差を評価できるものと考えられた. 第2研究では小児への負担を軽減した課題条件を設定することを目的に,健常成人のシミュレーションデータを用いて安定的な正答率を導くための必要最小数の施行数を求めた.結果から,各被験者内の正答率の安定性および個人間差の安定性を評価するために必要な施行数はほぼ同程度であった.この条件および試行数によって小児に最も課題負担が少ない条件で視覚情報の統合について検討しうると考えられる. 第3研究では実際に定型発達児を対象に疲労の効果を行動指標の違いとして検証することを目的にした.課題の前半と後半で正答率に疲労や学習の効果の影響は見られず定型発達児においても比較的信頼性の高い指標であると考えられた. 以上より先行研究の懸念点だった疲労影響の軽減と個人間差の評価を達成することができた.その要因として刺激呈示時間の短縮化が挙げられる.コヒーレントモーションの呈示時間を短縮することで従来の研究より視覚情報の統合がより求められたと考えられる.また疲労度の影響が少なく小児の視覚情報の統合を安定的かつ鋭敏に評価できると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では適応的歩行に関わる認知の神経基盤を明らかにすることを目的としており,本年度までに第1~3研究を行い,適応的歩行に関わる視覚情報の認知,特に視覚情報の時間・空間的統合について小児を対象に実施できる視覚課題の構築について達成した. 第1研究では,健常成人を対象に方向弁別の検出に関わる視覚情報処理の個人間差を評価できる課題条件を決定した.第2研究では小児への負担を軽減するため,健常成人のシミュレーションデータを用いて, 小児に最も課題負担が少ない条件で視覚情報の統合について検討しうる課題条件および試行数を決定した.第3研究では実際に上記の課題を定型発達児を対象に実施し,疲労や学習の効果の影響は見られず比較的信頼性の高い指標であることを検証した.以上,第1~3研究から,疲労度の影響が少なく小児の視覚情報の統合を安定的かつ鋭敏に評価できる課題を構築した. 平成24年11月~平成25年2月の3ヶ月半に研究代表者が産休に入ったため,当初の予定よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,適応的歩行に関わる視覚情報の認知のなかでとくに視覚情報の時間・空間的統合に着目し,小児を対象に実施できる視覚課題の構築を目的とした.成果として正答率や反応時間などの行動指標に基づいた課題を構築した. これを踏まえて,次に,行動データと脳活動データ(脳波)を同時に計測し,適応的歩行に関わる視覚情報の認知処理について具体的な脳活動の動態を明らかにすることを今後の目的とする(研究①).対象は健常成人および健常小児に設定する.健常成人にて行動データと脳波記録の同時計測条件の妥当性を検証した上で,同記録条件を小児で実施できるかその有用性を検討する. またさらに,適応的歩行に関わる感覚情報の認知の神経基盤について明らかにすることを目的とする(研究②).感覚情報の変化をトレッドミルの速度変化として生じさせ,感覚変化に対する歩行動態の適切さについて歩行動作を2次元座標計測システムをもちいて評価する.2次元座標計測システムでは,トレッドミル上で再現された歩行動作を正確に計測するために,非拘束型のポータブル計測器を導入する.得られた歩行動作から,歩行速度,歩幅,歩行周期,および歩行比を算出し.トレッドミルの速度変化が歩行動作に与える影響について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,適応的歩行に関わる視覚情報処理について行動データと脳波データの同時計測を行うため,同時測定の実験セットアップに必要な備品を購入する必要がある.具体的に,脳波データ記録収集用PCおよび周辺備品,脳波データ解析用PCおよび解析ソフトウェアを購入する.また適応的歩行に関わる感覚情報の認知について実際の歩行動態を再現するため,トレッドミルを購入する必要がある.またトレッドミル上で計測された歩行動作を解析するソフトウェアを購入する.
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