ゴール型ボールゲームにおける戦術的知識とパフォーマンスの関係を明らかにすることを目的とし,ゴール型ボールゲームであるサッカーを専門とする大学生,および高校・大学において運動部活動に参加した経験のない大学生を対象として,戦術的知識テストおよび戦術的知識テストと同様な戦術的課題を有するパフォーマンステストをフィールドで行った.主な結果は,以下のとおりである. 1.戦術的知識テストについて,サッカー競技選手が未経験者よりも有意に高い値を取り,ゴール型ボールゲームにおける戦術的知識は,それを行う過程で身につけていることが明らかとなった. 2.戦術的知識テストにおいて「スペースの創出」および「ベース」が,「スペースの活用」に比べて複雑な戦術的課題であることが推察され,戦術的課題における複雑さの順序性が示唆された. 3.パフォーマンステストについて,競技レベル上位群が下位群に対して有意に高い値を示し,ゲーム場面で直面することが予想される戦術的課題に関する知識獲得とそれらを構造化することがフィールド上でのパフォーマンスを規定する要因として考察された. 4.ゴール型ボールゲームにおけるトレーニングにおいて,フィールドでの戦術的トレーニングの必要性が考察された. 5.パフォーマンステストについても,「スペースの創出」,および「スペースの活用+創出」において上位群が有意に高い値を示し,「スペースの活用」においては有意な差は認められなかった.このことは,戦術的知識テストと同様に,戦術的課題の複雑さに関する順序性の問題を含んでいることが推察される. 今後の課題として,フィールドでのパフォーマンス向上を目的とする戦術的トレーニングの中で,戦術的課題の複雑さを考慮に入れた方法論の検討が挙げられる.
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