研究課題/領域番号 |
24500696
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
薮根 敏和 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10166572)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 体育科教育 |
研究概要 |
研究実施計画に基づき、平成24年度にはまず、発見学習の指標となる「よい抑込動作」を明らかにするための研究を、京都産業大学、及び同大学附属高の柔道部員を主な被験者として行った。その結果、「よい抑込動作」とは「相手の肩の動きの自由を奪う」動作であることが判明した。そこで上四方、横四方、袈裟固について、柔道熟練者をモデルとして「相手の肩の動きの自由を奪う」という目的に最も適った形態を探求し、「よい抑込動作」の形態的特徴を明らかにするとともに、形態評価の観点を見出した。そして、「よい抑込動作」の発見を学習の核にする発見型抑技授業プログラムを作成した。プログラムのプロットは、次の通りである。なお、プログラムの作成に加えて、発見学習用のビデオ教材の一部と学習ノートを試作した。①抑込が仰向けの相手の上半身を抑える理由と、それに関連した柔道原理の発見学習、②抑込のコツの発見学習、③四つん這いの相手を仰向けに返すコツの発見学習、④柔道原理を戦術として応用する応用学習。 また、発見型投技授業プログラムについては、開発当初から投げ動作の習得状況に関する評価を「局面構造」と「運動伝導」の観点で行ってきたのであるが、「運動伝導」の得点のみ向上が見られなかった。そこで、平成23年度に原因究明のための研究を実施し、問題解決のための教具として、平成24年度に「足形シート」を試作した。この教具は学習者に正しい足捌きを促すための教具で、畳に乗せても滑らず、簡単に外せるように工夫した。そして、このシートを用いた教材ビデオを試作し、投技プログラムに組み込み、京都教育大学で平成24年度に実施された護身術と柔道講座で実験した。得られた結果について、平成23年度実施の同様の講座と比較したところ、「足形シート」を用いた講座の「運動伝導」の得点が有意に高くなっており、「足形シート」の有効性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、武道の必修化に対応し、専門性を有していない指導者であっても、安全に柔道の授業が展開でき、かつ伝統的行動の仕方の理解や技能の上達を促進することができる中学生用「発見型柔道授業プログラム」を作成することである。これまでの研究で高校生用の「礼法プログラム」、「受身プログラム」、「投技プログラム」についてはその有効性を検証し、ほぼ完成している。今回の研究目的は、「抑技プログラム」を完成させ、その有効性を検証し、総合プログラムを完成させること、そして、総合プログラムについて中学生用にアレンジした「発見型柔道授業プログラム」を作成し、その有効性を検証することである。 以上の目的を達成するため、平成24年度は①「よい抑込動作」を解明し、それに基づく評価の観点や評価基準を作成して、柔道原理発見のための抑技学習プログラムを作成すること、②抑技プログラムをビデオ教材化し、学習ノートの作成すること、③投技プログラムの問題点を改善するための教具を開発し、その有効性を確認すること、以上3点を課題としていた。①と③の課題に関しては達成できた。②の課題については、未完成の部分はあるが、授業を展開するための試作品は作成することができた。そして、全体の授業時間は6時間程度と少なかったものの、作成した抑技プログラムを用い、中学生を被験者とする実験授業も実施することができた。研究はほぼ計画通り、順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の年度末に中学生を対象に、実験授業を展開した。実験授業は中学1、2、3学年を対象にして、「発見型抑技プログラム」によって授業を展開するクラスと従来型の一般的な抑技プログラムによって授業を展開するクラスをそれぞれ1クラスずつ用意した。担当教員はすべて柔道専門教員であった。これらの授業の中で、高田らの作成した授業評価用アンケートを柔道授業用に改めて作成したアンケート調査と、伝統的行動の仕方に関するペーパーテストを単元前・後に、抑込動作の撮影と抑込時間の測定、並びに四つん這いの相手をひっくり返す動作の撮影を単元後に実施したので、平成25年度にはまず、これらのデータを処理し、結果を分析、評価する。評価の結果、「発見型抑技プログラム」の有効性が検証できたならば、修正を加えたこれまでのプログラムに抑技プログラムを加え、総合的な「発見型柔道授業プログラム」を作成し、中学生向けにアレンジする。同様にビデオ教材も再編集し、中学生向けの総合的な学習ノートを作成する。評価の結果、プログラムに問題点が見つかったならば、プログラムを再考し、修正を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は0円にする計画であったが、購入依頼した物品価格と実際の購入価格の差等の関係で、1,320円が残ることになった。平成25年度は、抑込の発見学習ビデオを作成し、礼法、受身、投技の発見学習ビデオ教材も中学生向きに再編集する予定である。また、中学生向けの総合的な学習ノートの作成も併せて計画している。次年度使用額1,320円は、ビデオ制作、編集費、学習ノート製本費に組み込んで使用する予定である。
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