研究課題/領域番号 |
24500696
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
薮根 敏和 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10166572)
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キーワード | 体育科教育 |
研究概要 |
本研究の目的は、専門性を有していない指導者であっても、安全に柔道の授業が展開でき、かつ伝統的行動の仕方の理解や技能の上達を促進することができる中学生用「発見型柔道授業プログラム」を作成することである。 以上の目的を達成するため、平成24年度には「よい抑込動作」の発見を学習の核にする「発見型抑技授業プログラム」を作成し、中学生を対象に研究授業を行ったので、平成25年度には、評価結果を処理し、プログラムの有効性を検討した。その結果、「発見型抑技授業プログラム」は、「スポーツに対する愛好的態度の育成」、「技能の習得」、「体育の科学的知識の習得」等の学習目的に対して有効に働くプログラムであり、新学習指導要領で求められている「手に入れた知識や技能を実践の場で応用し、活用していくような能力を育成する」という目的にも適ったプログラムであることが検証できた。また、中学1年生を学習者とする場合は、プログラムの内容が量的に難しく、簡略化が必要であることも明らかになった。 また、投技の動き作りで課題であった運動伝導得点の向上に関しては、平成24年度に正しい足捌きを促すための教具「足形シート」を試作し、大学生を対象とした護身術と柔道講座で使用して好結果を得ていたので、平成25年度も同様に「足形シート」を用いた研究授業を実施した。そして、2年間の形態得点を集計し、使用しなかった過去2年間の結果と比較した。その結果、「足形シート」を用いた講座の「運動伝導」得点は有意に向上しており、「足形シート」の有効性が検証できた。 以上、発見型の受身、投技、抑技授業プログラムがほぼ完成したので、各々の展開の仕方と授業後の復習問題、評価シート等を掲載した指導者向けの学習ノートを作成した。さらに、この学習ノートの内容とこれまでの研究成果、並びに今後の研究成果を広く発信するために、柔道授業に関するホームページを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究計画は、次のとおりであった。(1)平成24年度末に中学生を対象に実施した研究授業の評価結果を分析し、「発見型抑技授業プログラム」の有効性を検証する。(2)「発見型抑技授業プログラム」の有効性が検証できたならば、修正を加えたこれまでのプログラムに抑技プログラムを加え、総合的な「発見型柔道授業プログラム」を作成し、中学生向けにアレンジする。(3)ビデオ教材を再編集し、中学生向けの総合的な学習ノートを作成する。以上の研究計画の内、(1)については達成できた。(2)については、中学2,3年生に対してはプログラムが有効に働いたため、抑技プログラムを加え、総合的な「発見型柔道授業プログラム」を作成することはできた。しかし、中学1年生に対してはプログラムが有効に働いたとはいえない結果となったため、中学生用にプログラムをアレンジするという作業には進めなかった。(3)については、ビデオ教材の再編集と総合的な学習ノートを作成することはできた。しかし、それらは発見型の柔道授業を展開するための指導者向けの教材として適当な内容であり、(2)と同様の理由から、中学生を対象とする柔道授業のためのビデオ教材や学習ノートを作成するまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
中学生を対象に実施した研究授業の結果を分析したところ、「発見型抑技授業プログラム」は中学2,3年生に対しては有効に働いたものの、中学1年生に対しては成果が認められなかった。そこで平成26年度には中学1年生に対して効力を発揮するようにプログラムを再考し、中学1年生用の「発見型抑技授業プログラム」、並びに総合的な「発見型柔道授業プログラム」を作成する。そして、中学1年生を対象に研究授業を実施し、その有効性を検討する。有効性の検討は、これまで行ってきた評価方法で実施する。その結果、プログラムの有効性が検証できたならば、中学2,3年生へと発展する「発見型柔道授業プログラム」を作成し、ホームページに掲載する。分析の結果、プログラムに問題点が見つかったならば、プログラムを再考し、修正を加える。 また、平成24、25年度の研究で投技の動き作りのための教具「足形シート」の有効性は検証できたのであるが、柔道講座の結果では「運動伝導」得点は「準備局面」、「主要局面」の得点に比べてまだ低い状態であった。この原因については平成25年度の研究で、動作に緩急をつけられない学習者がいること、つまり運動リズムを作れない学習者がいることにあると考察できたので、平成26年度には対応策を講じ、大学生を対象とした柔道講座でその効力を実験する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は0円にする計画であったが、購入依頼した物品価格と実際の購入価格の差等の関係で、33円が残ることになった。 平成25年度残額の33円は、平成26年度の物品費に組み込んで使用する予定である。
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