研究課題/領域番号 |
24500697
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
國土 将平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10241803)
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キーワード | 走運動 / 小学生 / 動作 / 運動観察法 / サイクルモデル / 構成概念妥当性 / 基準関連妥当性 |
研究概要 |
小学生における走動作について、動作因果関係モデルを作成し、そのモデルの適合度について検討した。研究の主要な手順は、①動作の因果関係を示すモデルを特性要因分析を応用して表し、そのモデルの応性概念妥当性を検証するために、構造方程式モデリングを適用した。②さらに走動作の基準関連妥当性を検証するために、項目反応理論を用いて、各走動作の特性値を求めると共に、対象者の動作得点を算出し、走記録との関連性を検討した。 本年度は評価観点の追加など有る場合に備えて、特に走動作の発達の著しいといわれる3年生に限定して評価を行い、年齢差による記録の向上を排除した。対象者は小学3年生男子43名、女子49名、合計92名であった。50m走において、25-35m区間の走動作を側方および前方より毎秒60コマで撮影した。その映像をスローモーションならびにコマ送りで再生し、36観点の走動作の評価を行った。 探索的因子分析の結果より、キャッチープッシュ動作と離地脚のスイング動作の動作因果関係を考慮し、スイング動作、キャッチング動作、乗り込み動作、弾性運動、プッシュ動作の循環型モデルを構成した。モデルの適合度はモデルの適合度はχ2=77.91(df=50)、GFI=0.886、AGFI=0.823、RMR=0.020、RMSEA=0.078であった。潜在変数として、乗り込み動作→弾性運動→プッシュ→脱力・スイング→脚ムチ動作の循環を確認することができた。 項目反応理論を用いた動作の評価では、スイング動作からキャッチ動作に移行する膝の高さ(困難度=2.378、以下省略)ならびに膝の角度(1.469)が難しい動作であることが明らかとなった。また児童の疾走タイムと動作得点の間にはr=-0.791(p<0.01)の関連性が見られ、走動作と疾走タイムの関連性は高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走動作の評価観点の記述や絞り込みについては、力みから生じる不適切な動作や癖、左右の不均衡についても評価を試みた。その結果、力みから生じる不適切な動きや癖は、個人固有のものであり、一般化が難しいことが明らかとなった、また左右の動作の不均衡については、分析の結果、好ましくない動作として評価することが適切であることが明らかとなった。動作の評価観点など、学会において発表し、批評をうけ、新たな指摘も有ることが期待されたが、専門家による評価は概ね適切であるとの評価を頂いている。運動観察法による定性的な動作評価に時間と労力がかかるため、動作評価観点の追加があると、再評価が必要となるので、本年度は3年生を中心に解析を進めたが、現在までの研究成果をそのまま、他の学年に拡張してもよりと思われる。 動作と疾走タイムの関連は予想よりも高く、動作評価が適切に行われていることを示す。 習熟度レベルに応じた運動指導として、現在まで得られた結果をもとに、運動プログラムを考案し、小学3年生を対象に8回の運動プログラムをした。これらの動作の改善についての検証は、動作評価観点の再構築の可能性があったため、昨年度は実施していない。本成果は来年度の学会で発表予定である。 ジョギング動作についての評価は、動作自体が小さいため、モデルを考案中であるが、難航している。
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今後の研究の推進方策 |
小学校3年生のみならず、小学校1年生ら6年生までの走動作の評価を行う予定である。その際に、年齢により、動作の重要な観点が異なる可能性が考えられる。従って、1・2年生、3・4年生、5・6年生の3階級で走動作の分析、検討を行い、年齢による構造の違いや困難度、重要度の変化を検証する。 ジョギング動作については、評価観点の完成が不十分あるが、実際の動作を収集し、その事例を参考にしつつ、動作評価モデルの構築を行う。 昨年度実施した小学校3年生を対象とした運動実践プログラムの指導内容と参加者の動作の変化について、現在までの知見を参考に分析し、運動プログラムの有効性について検討する。また、その他の学年についても、走運動の特性にもとづいた運動プロクラムを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動作分析の謝金を準備しておいたが、成果の発表などの歳に、他の研究者、専門家から動作の評価観点の変更があることが予想されていた。そのために、動作分析を小学3年生についてのみ限定的に実施した。以上の理由から、作業を控えたために、その謝金分が未使用金額となった。 上記未使用金額は、次年度の6月以降、4名の学生・院生を雇用し、合計80時間程度の動作分析の謝金として使用予定である。
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