研究課題/領域番号 |
24500697
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
國土 将平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10241803)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 走運動 / 奨学生 / 動作 / 運動観察法 / 項目反応理論 / 段階反応モデル / 局所独立 |
研究実績の概要 |
小学生における走動作について、動作因果関係モデルを作成し、そのモデルの適合度について検討した。昨年度までに予備的解析を含めて作成した動作の因果関係モデルの36個の評価観点を用いて、小学校3・4年生189名の50m走における25-35m区間の疾走の走動作を側方および前方より毎秒60コマで撮影し、その映像をスローモーションならびにコマ送りで再生し、走動作を分析した。また当該区間における疾走タイムを光電管を用いて測定し、疾走速度を用いた。 走動作の一次元性確保のために、カテゴリカル主成分分析を用いて、第一主成分との負荷量が0.4以上の26項目を解析の対象とした。動作の特性を明らかにするために、項目反応理論の段階反応モデルを用いて、各動作項目の困難度、識別力並びに対象者の能力値を求めた。項目反応理論の適用に際して、問題となっていた局所独立の仮定について、対象者を能力値によって5つのグループに分類し、それぞれのグループ内で動作因果関係が仮定できる項目間の独立性をカイ2乗検定を用いて確認した。 項目反応理論を用いた動作の評価では、スイング動作からキャッチ動作に移行する膝の高さならびに膝の角度、腕振りの肘の動き、離地時のプッシュの強さ、そして、弾み感が難しい動作であることが明らかとなった。疾走速度と動作得点の間にはr=0.842の関連性が見られた。また、簡易評価として、膝の最高点、乗り込み動作、前腕の振り下ろし動作、腕振りの肘の動きならびに肘の角度、弾み感、プッシュの七項目を用いた結果、全評価項目を用いた場合の得点とr=0.953であり、また疾走速度との間にr=0.841の関連性が見られ、簡易測定項目でも適切に走動作を評価できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中に小学校1年生~6年生の全対象者550名の解析を修了する予定であった。450名までの解析を終了した時点で資料の検討を行ったところ、熟練した動作観察者と、新たに観察を行った者との間に評価観点のずれを確認できた。熟練者とそれ以外の観察者の評価観点について、詳細を確認したところ、15項目に於いてその観点の不一致を確認した。およそ260名の動作の再評価が必要となった。 これらのずれの確認作業に2月を要し、現在は観察者全員が同じ観点で評価できるかを確認中である。以上の点によって、予定していた目的の達成までは至っておらず、およそ3か月の遅れを想定している。 また、解析を通じて、疾走動作のモデルとして、接地時の足の挟み込み動作が重要であると考えて、サイクルモデルと挟み込み動作で接地脚とスイング脚が連動するモデルを作成して比較したが、サイクルモデルのほうが適合度が高い結果となった。指導の観点として、足の相互の協調動作を含めることが可能であるか今後検討の必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度7月末までに、対象者全ての分析を修了する。 分析の観点として、性別・年齢により、動作の重要な観点が異なる可能性が考えられる。従って、1・2年生、3・4年生、5・6年生の3階級で走動作の分析、検討を行い、年齢による構造の違いや困難度、重要度の変化を検証する。また、走運動の特性にもとづいた習熟度別の運動プロクラムを作成する。 以上の結果を、日本体育学会、日本発育発達学会、日本体育測定評価学会において公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに使用出来たが、アルバイトの時間調整によって、わずかの次年度使用金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度修了していない動作評価のため、次年度と合算して利用予定である。
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