本研究では小学生の50m走中間疾走局面における運動観察法による走動作について,走運動全体に与える各動作の関与の程度ならびに各動作の動作の難しさがどのように学年によって変化するかを検討することを目的とした。 対象者は奈良県の小学校に在籍する小学生男子257名、女子278名、合計553名であった。50m走において、25-35m区間の走動作を側方および前方より毎秒60コマで撮影した。その映像をスローモーションならびにコマ送りで再生し、走動作の評価として、昨年度までに構築した)の36の評価観点(図1,表2)を用いて評価した。評価した動作について、動作達成率ならびに1次元性を確認できた25項目に対して,項目反応理論(IRT : Item Response Theory)を適用し,項目特性値ならびに各個人の動作能力値を算出した。算出した能力値に対して,学年と性別を要因とした2元配置の分散分析を施し,学年差のみ有意であることを確認した上で,学年別(1・2年生,3・4年生,5・6年生)別に再度IRTを適用し,3・4年生を基準に得られた項目特性値ならびに能力値を等化し,有効となる変数ならびに特異項目機能より,動作の難しさなどの変化を検討した。また,得られた能力値と疾走スピードの間の関連性を検討した。 その結果,腕振りなどの上半身の動作,接地動作は1・2年生では走動作に連動していないことが明らかとなった。走動作は4年生までは改善するが,それ以降は大きな変化が見られないことが明らかとなった。加えて,5・6年生ではスピードは向上するが、動作得点が向上しない場合もあり、第二次性徴を迎えた子どもは,スピードが高いが身体のコントロールが難しく,動作のバランスが悪くなる傾向にある。以上を踏まえて、それぞれの発達段階での走運動の指導の方法について、考察することができた。
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