これまで,小学校高学年期の体育授業においては,学習成果(態度得点)を高める教師の言語的相互作用として特定の8つの品詞の用い方,すなわち体育授業の<文法>が存在していることが報告されている。本研究では,小学校低学年期と中学校期における教師の言語的相互作用との比較から,その共通性と異質性について検討を加え,義務教育段階の体育授業の<文法>の構造とその規則性について考察することが目的である。 最終年度は,小学校低学年(2・3年)の学習成果(態度得点)を高めた教師とそうでない教師の言語的相互作用を分析した。その結果,小学校低学年期においても高学年期に認められた8つの品詞の用い方が確認された。さらに,低学年期に特徴的な品詞として,感動詞(肯定的),形容詞(肯定的),形容詞(対比)が認められた。これらより,低学年期では,子どもの工夫した動きを認めて授業の雰囲気を盛り上げながら,課題把握場面では子どもの課題を明確にさせ,課題解決場面では動きのイメージを具体化させているものと考えられた。また,中学校期の事例的分析では,小学校高学年と同様に8つの品詞の用い方が確かめられた。これらのことから,小学校低学年期と中学校期においては,各品詞の使用頻度の多い少ないはあるものの,特定の8つの品詞の用い方が高学年期と同様に認められた。 以上のことから,義務教育段階においては,学習成果(態度得点)を高める特定の8つの品詞の用い方,すなわち体育授業の<文法>が存在しているものと考えられた。
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