自己表現としてのダンスを、幼児から高齢者まで、また障害を持つものも持たない者にも、さらに一人一人の生涯教育としても楽しみ続けるために、最低何を教えれば良いのかを、「教えないダンス指導」として探った。 最終年度のh26年度は、3年間継続したホーチミン市の知的障害児学校3校での幼児から小学生への指導、鳥取市内のインクルーシブなダンスグループ(小学生から40歳代)及び、重度身体障害施設(青年から高齢者)での月1回の指導、倉吉市内の精神障がい者との不定期ではあるが継続的な指導から、指導過程と方法の妥当性を探り、合わせて、中高年女性、会社OBの男性、幼児と保護者、特別支援学校中学部2校3グループでの初めてのダンス体験の指導を通して検証し、「教えない指導」について以下のことを得た。 参加者全員が、表現と享受の楽しみという自己表現としてのダンスそのものを体験するために、動きを通して自分を「渡し」「受け取る」ことで始め、単発的な表現から、ダイナミックなひと流れのダンスを共有するまでを1回のクラスで体験する指導過程をとる。はじめ段階で、体の動きで「渡し」「受け取る」ルールを、ひとつだけ動きを隣に「渡す」ことで教える。渡した動きが各人に真似され、個性を反映しながら参加者の円を巡る何周かの間に、変化を伴った長い動きの言葉に変わるのを助ける指導言は、参加者に通じる「共感」と「驚き」の言葉かけである。指導補助者は、「教えない」「待って真似て返す」を徹底する。 「教えないダンス指導」による継続的な活動を通して、「個」対「援助者」の関係で活動することの多い知的障害児や重度身体障がい者が、グループにまで関心を広げたこと、精神障がい者が、障害をテーマにした作品を創作したことが特筆される。単発のダンスクラスでも短時間で楽しみ、自己解放と自己変革を実感していることを確認できた。
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