研究課題/領域番号 |
24500702
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田中 雅人 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70207140)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 印象分析 / 感性語 / 心理的尺度 / 動作分析 / 物理情報 |
研究概要 |
本研究の目的は,動きの印象を定量化するための心理的尺度を作成したのち,動きの時間的・空間的物理量,身体特性などを説明変数,動きの印象を目的変数とし,多変量解析を行うことで動きの印象を決定する物理情報を特定する.さらに,動きを観察する際の注視行動を説明変数,動きの印象を目的変数とし,両者の関連性を検討することであった. そこで,本年度は,動きの印象を定量化するための心理的尺度を作成するため.まず,大学ダンス部に所属する男子大学生1名(エキスパートモデル)の10動作を刺激映像として撮影した.次に,41名の大学生(年齢:M=19.2,SD=0.84)を対象に,刺激映像を呈示し,動きの印象を表す感性語(形容詞・形容動詞)を自由記述させる調査を実施した.得られた回答をテキストマイニングの手法を用いて分析したところ,形容詞70語(出現回数517回),形容動詞59語(出現回数337回)が抽出された.出現頻度の多い語は,「なめらか,おおきい,はやい,きれい,かっこいい,うつくしい,おもしろい,はげしい,ダイナミック,すばやい,リズミカル,やわらかい,しずか」などであった.調査の結果を参考に,心理的尺度を構成した. また,ダンスのスキルレベルの異なる大学生(モデル)5名に,エキスパートモデルと同じ10動作を行わせ,2台の高速度カメラを用いて撮影した.撮影後に映像をデジタイズし,動作解析プログラムを用いて,動きに関わる物理情報を収集した.さらに,身長,体重,肩幅,上肢長,下肢長など12項目について形態測定を行った. 今後は,スキルレベルの異なるモデルの動きの印象を心理的尺度を用いて評価し,動きに関わる物理情報および形態測定の結果との関連性を検討する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,動きの印象を定量化するための心理的尺度を作成するための調査を行い,さらに,高速度カメラと動作解析プログラムを用いて,動きに関わる物理情報を収集する計画であった. まず,大学生を対象に調査を行い,動きの印象を評定するための心理的尺度を作成するための基礎的データを収集した.この調査結果と先行研究で用いた心理的尺度を参考に,本研究で用いる心理的尺度を構成した. また,5名の大学生(モデル)を対象に時間的・空間的物理情報を収集するため,高速度カメラを用いた撮影を行い,映像のデジタイズを完了した.さらに,形態測定を行い,各モデルの形態的特徴を明らかにした. 現在,調査の結果に基づき作成した心理的尺度による評価と時間的・空間的物理情報,およびモデルの形態的特徴との関連性について分析を進めている.研究は,おおむね順調に進展していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,定量化された動きの印象と時間的・空間的物理情報および注視行動との関連性を分析するための実験を行う.今年度の実験で撮影したモデルの動きの映像を被験者に観察させ,動きの印象を評価させる.観察を行う際,眼球運動解析システムを用いて,被験者の視点の移動軌跡,移動速度,注視時間などの注視行動に関わるデータを収集する. また,ダンスのスキルレベルが異なるものを被験者とし,スキルレベルによる動きの印象評価の違いや注視行動の違いを検討する.次に,動きの印象評価を目的変数,今年度の実験で収集したモデルの時間的・空間的物理情報および形態的特徴や運動能力を説明変数とし,多変量解析などの統計分析を行い,両者の関連性を検討する.さらに,動きの印象評価を目的変数,視線の移動軌跡などの注視行動を説明変数とし,両者の関連性を検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
被験者の注視行動を検討するために用いる眼球運動解析システムは,今年度の研究費ですでに購入している.次年度の研究費は,高速度カメラによる撮影,およびアイマークレコーダーを用いた眼球運動の測定を行う際の補助員に対する謝金,さらに,撮影した映像を動作分析するためのデジタイズ,および注視行動を解析するためデータ処理の謝金として使用する. また,日本体育学会,日本スポーツ教育学会等の関連学会で研究成果を発表のために旅費として使用する.
|