研究課題/領域番号 |
24500703
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
榊原 浩晃 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50255220)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 身体教育 / 三育主義 / 近代教育 / 西欧 / 明治期 |
研究概要 |
平成24年度の研究目的は、西欧における身体教育の用語出現の時期に遡り、日本への受容に関する時代的特徴を明らかにすることであった。日本においても、三育主義教育の身体や身体教育はハーバート・スペンサー(スペンサーの著書『知育、徳育、体育論』1861年)以前の影響がしばしばみられる。平成24年度の研究視座はスペンサー以前のこうした身体教育論が西欧においてどのような経緯で当時の庶民教育に位置づけられていったのか、日本にどのように影響を与えたかという点に絞り、近代三育主義教育における身体教育の位置づけとその重要性を確認する研究に着手した。そのために必要となる資料・文献を収集した。イギリスで最初の身体教育に関する単行本はサムエル・スマイルズの『身体教育論』が嚆矢となる。平成24年度は、スマイルズの『身体教育論』の中で、身体教育と知的教育および道徳教育との相互関連が位置づけられた。 さらに、ハーバート・スペンサーの影響については日本の近代教育黎明期の事情を考察することによって、本研究の課題がより明確になった。明治初期の東京大学で刊行された学術紀要『學藝志林』所収の「體操術ノ世代」(明治12年)は英米の身体教育のあり方とスペンサーの三育主義の身体および身体教育を跡づける上で重要な資料であることが判明した。前述のサムエル・スマイルズは、『自助論』(日本語訳版は『西國立志編』)の著者としても著名であるが、『自助論』も日本への身体教育やスポーツへの受容について必読の文献である。そのテキストを解読し、英国人のスポーツの考え方とスポーツ用語の紹介がなされていたこと、およびスポーツの日本的受容の特徴について、研究成果を国際体育・スポーツ史学会(2012年ブラジル、リオデジャネイロで開催)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実績として、本研究は西欧における身体教育の用語出現の時期に遡り、日本への受容に関する時代的特徴を明らかにすることができた。このことでの研究成果はまず、日本体育学会第63回大会で研究成果を行ったように、明治初期の東京大学学術紀要である『學藝志林』に収録されていた資料「體操術ノ世代」(明治12年)を発見したことであった。日本においても、三育主義教育の身体や身体教育はハーバート・スペンサー(スペンサーの著書『知育、徳育、体育論』1861年)の影響がしばしばみられた。このことを原典を紐解いて、解明することに研究の意義もあった。 さらに、平成24年度の研究目的は、スペンサー以前のこうした身体教育論が西欧においてどのような経緯で当時の庶民教育に位置づけられていったのかということであった。西欧近代教育における三育主義の端緒は19世紀初頭にまで遡り、ヨハン・ハインリッヒ・ペスタロッチー、マルク・アントワーヌ・ジュリアン、ジョージ・エドアルト・ビーバーらの教育実践家・教育論者によって唱えられていた三育主義教育の根源に関する検討に着手した。これらの論文作成は今後の課題である。 また、日本においても、三育主義教育の身体や身体教育はハーバート・スペンサー(スペンサーの著書『知育、徳育、体育論』1861年)以前の影響がしばしばみられる。イギリスで最初の身体教育に関する単行本はサムエル・スマイルズの『身体教育論』が嚆矢となる。平成24年度は、スマイルズの『身体教育論』(1838年)において,身体教育と知的教育および道徳教育との相互関連を位置づける論文を執筆した。したがって、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては西欧言語圏の身体教育概念のうち、初期の意味内容を歴史的な資料の吟味によって時系列的に明らかにする必要がある。原典の文献としては,マルク・アントワーヌ・ジュリアンの『身体教育、道徳教育、知的教育の一般論』(1808年)の存在が最も初期の近代三育主義教育の身体や身体教育を語っており、その翻訳作業に着手する。それらへの研究視座は、ハーバート・スペンサーへと継承される身体教育論を考察しようとするためであり、西欧の身体教育論の内容や位置づけに平成25年度の研究の着眼点を移していくことが必要となる。 また、平成24年度に明らかにした日本への西欧三育主義教育の影響について、「體操術ノ世代」の原著者フェリックス・オスワルドの履歴と身体教育論の位置づけをさらに究明する必要がある。その点で、平成24年度のテキスト解読の成果を論文にまとめ、研究成果として発信する。オスワルドの身体教育論とスペンサー哲学、および教育論との連関も吟味する必要がある。これらに関して、平成25年度は当該研究を推進していくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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