研究課題/領域番号 |
24500703
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
榊原 浩晃 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50255220)
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キーワード | 身体教育 / 三育主義 / 近代教育 / 西欧 / 明治期 |
研究概要 |
平成25年度の研究実績として、本研究では西欧の身体教育が日本に受容された足跡を辿り、明治初期の資料(「体操術の世代」(明治12年))にみる体操と身体教育の目的・内容について、和漢混交文の資料の具体的記述に関する校注を作成することによって解明した。また、これらの資料の底本にあたる原書及び関連資料の収集に努め、欧米の身体教育概念がギリシャ時代のギュムナスティケー(古代ギリシャ語の身体教育の意味)を継承していたことについて、具体的に資料の中での指摘箇所を発見した。日本体育学会第64回大会での研究成果発表と国際体育・スポーツ史学会での研究成果発表を行い、本研究に関する今後の研究内容(三育主義の教育と身体教育の位置づけをさらに追究すること)について、研究協力者からの専門的知見や他の研究者から助言を受け、それらの知見を加味しつつ、研究を進めた。 ハーバート・スペンサーの著書(『知育・徳育・体育論』1861年)の刊行以前にスペンサーが著していた三育主義教育と身体教育をめぐる具体的な資料及びその記述内容を明らかにするために文献調査を過去に遡って実施した。スペンサー以前の三育主義と身体教育論が西欧においてどのような経緯で当時の知識階級の人々や教育実践家らによって主張されるようになったのか、その点の解明を試みた。ヨハン・ハインリッヒ・ペスタロッチーをめぐる庶民の教育思想における身体教育の考え方を位置づけ、スペンサーの三育主義の身体及び身体教育への接点を探る研究を進展させ、研究成果発表を行った。これらの論文作成は今後の課題である。さらに、ペスタロッチーの庶民教育をフランスに紹介し、自ら三育主義教育を唱えたマルク・アントワーヌ・ジュリアンの原書にみる身体教育の概念と内容について資料翻訳に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度においては、日本における明治期の身体教育概念受容の一端を明らかにした。明治初期の資料(「体操術の世代」(明治12年))にみる体操と身体教育の目的・内容について、和漢混交文の資料の具体的記述に関する校注を作成することによって解明し、当初の研究目的(平成25年度の研究実施計画に基づいた研究目的)を達成しつつある。スペンサー以前の三育主義と身体教育論が西欧においてどのような経緯で当時の知識階級の人々や教育実践家らによって主張されるようになったのか、その点の解明を試みた。ヨハン・ハインリッヒ・ペスタロッチーをめぐる庶民の教育思想における身体教育の考え方を位置づけ、スペンサーの三育主義の身体及び身体教育への接点を探る研究を進展させ、研究成果発表を行った。これらの論文作成は今後の課題である。 さらに、ペスタロッチーの庶民教育をフランスに紹介し、自ら三育主義教育を唱えたマルク・アントワーヌ・ジュリアンの原書にみる身体教育の概念と内容に関する検討を進めた。したがって、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、西欧言語圏の身体教育概念のうち、スペンサーの三育主義と身体教育との関連について、具体的な資料の記述を検討し、近代教育における身体や身体教育の位置づけを明確にする必要がある。さらに、マルク・アントワーヌ・ジュリアンの『身体教育・道徳教育・知的教育の一般論』(1808年)の翻訳と解釈の検討をさらに進展させる必要がある。 また、これまで英語圏で初期の身体教育に関する単行本として知られるサムエル・スマイルズの『身体教育論』(1838年)より以前の身体教育論に関する資料収集とその解読を進める。特にスマイルズの参照した文献としてチャールズ・カートウェルの文献(『身体教育の提言』(1836年))を精査する研究に着手する。それらを含めて3年間の研究の総括を行う。
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