本研究全体の目的は,インドネシア・ジョグジャカルタのムラピ山近郊地域の児童を対象とした,心理社会的スキルの獲得等を目的とする体育・スポーツプログラムを開発・実践し,その効果を検証すること,および,自然災害の被災下にいる青少年の心理社会的側面の改善に資する体育・スポーツ活動のあり方についての提言を行うことである。この目的達成のために,下記の調査研究活動を行った。 1.理論に基づいた具体的プログラムの試作:体育・スポーツを通した心理社会的スキル教育に関する情報を収集するとともに,子どもたちの心理社会的スキル獲得に資する具体的な運動・スポーツプログラムの作成を試みた。結果として,様々なスポーツ,身体活動,ゲームを通して心理社会的スキル(問題解決スキル,主張性スキル,友情形成スキル,ストレス対処スキル等)を獲得させるためのプログラムが提案された。 2.対象者の基本情報の収集と分析:ジョグジャカルタ州立大学の研究協力者との研究会議において,インドネシアの小学校教師に対するインタビュー調査結果をもとに,調査対象者の特徴を分析した。また,心理状態にかかる調査の具体的内容を検討し,調査を実施した。 3.教育プログラムの実施と効果検証:開発された,43の身体活動で構成されている心理社会的スキル教育プログラムを,体育授業の中で実施し,その効果の検証を試みた。その結果,ネガティブな心理状態の改善が認められ,また,コミュニケーションスキルや社会的気づきスキルの向上が確認された。 4.平成28年度の成果:本研究をより精緻なものとするために,研究期間を1年延長して,関連情報を追加収集するとともに,いっそう詳細な分析を行った。そこで得られた成果や当該プログラムの重要性・課題,および,被災地における心理社会的支援にかかる提言は,国際学会で報告し,また,国際学術誌で公表した。
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