本研究は、ひととひととのあいだで成り立つ社会的理解を、身体的な相互行為に基づいて解明することを目指したものである。従来の心の科学の議論では、ひとは一般に「心の理論」を用いて、他者の心的状態を推論によって理解すると想定されてきた。しかし、本研究の成果によると、最も基礎的な社会的理解は、他者の行為の意図を直接知覚すること、その意図に応じる行為を返すことから始まる。自他間のこの種の身体的相互行為が暗黙の社会的文脈を生成し、その文脈のうえで、私たちは言語的コミュニケーションを通じて明示的な相互理解に至るのである。このような意味で、私の身体と他者の身体のあいだが、間主観性の起源である。
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