研究課題/領域番号 |
24500710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松本 秀夫 東海大学, 体育学部, 教授 (40256178)
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研究分担者 |
佐藤 延男 東海大学, 海洋学部, 准教授 (60609353)
大津 克哉 東海大学, 体育学部, 講師 (70598094)
鉄 多加志 東海大学, 海洋学部, 講師 (40631825)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / サーフィン / 海水浴 / 入込客 / ダイビング / 復興支援 / 環境啓発 / 環境倫理 |
研究概要 |
本研究は、体育・スポーツ科学をベースとして、野外教育学、環境学、心理学、社会学の視点を持って、2011年3月に発生した東日本大震災において被害を受けた海洋スポーツ・レジャー(海水浴含む)を対象に、現地フィールド調査(物理的変化)、半構造化面接法による聞き取り調査の手法によって現状分析を行った。 その結果、課題とした①サーフィン・ダイビングポイントの物理的な変化(地盤、構造物、海流等)は、宮城県の仙台新港、菖蒲田海岸、小泉海岸において、経年的な変化の状況を把握することができた。現在も変化が続いていることが確認され継続的な情報収集を続けることが重要である②サーフィン・ダイビングに関する聞き取り調査から、サーファーのボランティア活動の状況や、復興支援などの具体的内容を把握することができた。また、サーフポイントの再開に関しては、地元のサーフショップユニオンなどが、自治体との地道な努力により再開にこぎつけている現状を確認できた。その結果から、自治体との関連についての調査の必要性を認識し、25年に研究分担者を追加して詳細な調査を実施することとした。ボランティアダイバーの状況についても、岩手県南三陸町の現地調査から現地の実態を把握することができた。ダイビングによる復興と新たなレジャー産業の算出という側面からの考察が重要である③海水浴に関する調査については、入込客の統計データによる入込客の推移と、現地調査から、震災直後の諸条件により、日本海側の一部で一時的な入込客増などが発生していたことなどについての現状把握と考察が重要である④復興に向けた環境倫理・環境啓発に関する考察については、各地で行われている復興に関して、海洋スポーツの視点からみて、単なる観光の為の復興や、場当たり的なものではない、人と観光産業が自然環境との共存という意味合いについて考えることが重要であり、検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の目的としてあげた具体的な内容である①~④(①サーフィン・ダイビングポイントの物理的な変化(地盤沈下、構造物、海流等)②サーフィン・ダイビング愛好者及びショップ・サービスに対する調査③海水浴場の来場者の意識と行動に関する調査」④海洋スポーツ・レジャー復興にむけた環境倫理・環境啓発に関する考察に)関しては、現地調査に基づく、聞き取り・資料収集により、計画以上に進展し、各種の学会で報告を行っている。特に、サーフィンの再開に関する状況については、全日本サーフィン連盟の活動や地元のサーフショップユニオン・ローカルサーファーが自治体との関係の取り方などについて、予想以上の知見が得られている。また、ダイビングボランティア・海水浴についての現状と今後の復興支援などについても、同様に成果がでている。環境倫理・環境啓発に関しても、復興に関するモデルの構築について検討を行い論文の執筆を行っている。 しかし、当初平成24年度に、オンライン調査と質問紙調査の併用による、量的な質問紙調査の実施を計画していたが、面接法による質的調査の結果から、質問項目が対象や現況によって異なる場合があり、現在、25年度の実施に向け、質問項目の内容の検討を行いっている。質問紙の完成後、調査を実施する。 調査結果は、随時集計・分析し、平成24年度の結果も含め、国内外に成果の発表を行っている。平成24年度には、国内の学会に6件の研究報告を行っている。また、平成25年の5.6月に国際学会、6.9月に国内学会で発表を行う。また、研究論文を4本執筆中で投稿する準備を行っている。平成25年度内には、すべての論文を投稿する予定である。 このように、質問紙調査が遅れたが、計画以上に進んでいる点が多く、全体的には順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、東日本大震災後の被災地の復興の状況に、その視点が移っている。昨年度は、震災後の現状把握とその分析が主たる内容であったが、震災からの復興が進むなかで、復興による活動再開の状況が海洋スポーツ・レジャーの種類、エリアによって異なることから、それぞれの状況から復興についての考察が重要となっている。 これらのことを踏まえ、平成24年度に行った現地調査によって得た、現地との関係を強固にして、地道な調査を継続していくことが重要である。また、研究分担者にスポーツ経営管理学・スポーツ行財政の専門家を加えたことから、国・自治体との関係に関する調査・分析を行うことが可能となり、本研究に欠けていた部分が補われることが予想される。震災という特殊状況での調査は、予想できないことが起こることから、今年度も新たな課題が生じることも予想しなければならない。 加えて、東日本エリア以外の日本全国の海洋スポーツ・レジャーの影響についても、検討することが必要であり、遅れている質問紙による量的な調査を全国規模で実施することによって、全国的に受けた影響を明らかにすることが可能であると考えている。 以上のことから、今後、平成26年度の研究完成年度までに、本テーマにおける総合的な考察ができるように、適時工夫を加えながら研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、現地調査と質問紙による調査及び、平成24年度の研究結果の成果発表が研究費の大きな支出となる。また、平成24年度に計画した質問紙調査は、現地調査の結果を総合的に判断して25年度の実施に変更したこととから、質問紙の印刷、集計処理に関する費用が未使用での繰越となった。 この繰越費は、平成24年度に得られた結果を基にした、「サーフィン・ダイビング愛好者及びショップ・サービスに対する調査」と「海水浴場の来場者の意識と行動に関する調査」の質問紙による量的な調査に使用される。*質問紙印刷費・郵送費、分析補助等 現地でのフィールド調査「サーフィン・ダイビングポイントの物理的な環境変化の調査」については、平成24年度からの継続として実施する。また、昨年の調査から、自治体と地元の事業者の団体等の関係について、別途これに焦点を絞った分析の必要性があり、分担者の追加を行っての調査を行う。ダイビングの復興支援及びボランティアについても、現地調査を継続する。*国内旅費、謝金、備品等 平成24年度の結果及び、平成25年度の調査結果は、国内外に成果の発表を行う(5月台湾:国際学会・6月フランス:国際学会・6月9月国内学会)。*国内・国外旅費
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