研究課題/領域番号 |
24500710
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松本 秀夫 東海大学, 体育学部, 教授 (40256178)
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研究分担者 |
佐藤 延男 東海大学, 海洋学部, 准教授 (60609353)
大津 克哉 東海大学, 体育学部, 講師 (70598094)
鉄 多加志 東海大学, 海洋学部, 講師 (40631825)
川邊 保孝 東海大学, 体育学部, 講師 (10466667)
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キーワード | 東日本大震災 / 海洋スポーツ・レジャー / サーフィン / ダイビング / 環境倫理 / 海水浴 / 入込客 |
研究概要 |
本研究は、体育・スポーツ科学をベースとした野外教育、環境倫理、スポーツ経営管理、心理学、社会学の視点から、東日本大震災後に影響を受けた海洋スポーツ・レジャー(海水浴含む)の状況分析と復興に関して調査を実施し考察を行った。 その結果、①サーフィン・ダイビングポイント(フィールド)の物理的変化は24年には復興途中であった仙台新港において駐車場が再オープンし利用者の利便性が向上し、震災前の水準に戻っていた。しかし、場所によっては瓦礫の除去が進まず再開していない。ダイビングは地形の変化に伴い潜水が不可能となった場所もあるが、新たなダイビングポイント(竹浦)が創出されていた。②サーフィン・ダイビング活動に関連した地域との関係は、良い方向に進む場合と新たな問題や課題が指摘される場合があった。ダイビングは、漁業者の世代交代も重なり商業ダイビングが開始されボランティアダイビングから商業ダイビングに発展し良好な関係が築かれていた。サーフィンは、震災直後からの地道な活動実績に加え自治会や観光協会・体育協会などの地域組織との信頼関係や、サーフィンを愛する地域住民の人的ネットワークなどが間接的に行政機関との良好な関係構築に寄与していた。しかし、場所によっては震災後に一時離れた愛好者やサーフィン業者がポイントに戻りルールの再調整などの新たな問題も生じている。③復興と環境倫理は「環境の持続可能性の確保」という点に着目し、スポーツ・レジャー活動が復興という観点から地球環境問題に対してどのような社会的貢献を果たすのかを考察した。スポーツ・レジャー活動を通じた「身体的体験」は被災地の地球環境の大切さを知る「感性の教育」と成り得ることが示唆された。④海水浴入込客数は、各都道府県の統計データを集約し経時変化を分析した。天候など要因が多岐に渡り一概に判断できないが多くの地域で震災前の水準に戻っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の目的達成度は、①サーフィン・ダイビンポイントの物理的な状況については、25年度の現地調査にても状況が把握され、計画以上に達成されている。ダイビングでは、気仙沼市の竹浦ポイントの解放が行われ、現地潜水調査を実施した。また、潜水ボランティアの継続状況も把握することができた。26年度も現地との良好な関係があり継続的活動情報を入手でき計画以上に進展している。②行政との関係は、現地調査結果による状況の把握と問題点の整理が進んでいる。しかし、サーフィンは新たな課題も発生していることから継続調査が必要である。ダイビングは漁業者との関係について考察し達成度は高い。③海水浴調査は全国自治体が公表している入込客データの集約は概ね終了し分析を行っている。しかし、質問紙調査は、福島原発問題が関連していることから、海水浴場の入込客と再開に関する問題の所在が、原子力発電にフォーカスされ原発の賛否として捉えられてしまうことが懸念された。また、海水浴場の入込客低下の為営業を取りやめた宿泊施設も多数あり、サンプリング問題も含め25年度の調査実施を見送った。この点において遅れている。④サーフィン・ダイビングショップの経営状態調査に関して、サーフィン調査は研究分担者が9月に退職したことと、商業ベースの再開が遅れていることから26年度での調査に変更を行った。 現地調査による研究成果及び復興と環境倫理との考察は計画以上に進展している。しかし、質問紙調査計画のみが遅れているが、原発問題の影響があり慎重な対応することは重要であるとの判断は正しいと感じている。 25年度に公表した研究結果は、ほぼ計画通りの海外4件(フランス・台湾)、国内2件の発表である。全体として質問紙調査以外は計画以上に進展しているが、質問紙調査が遅れている事からやや遅れていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度であり、研究発表及び論文投稿が主となる予定であったが、質問紙調査の実施が26年度に繰り越された。しかし、調査準備は完了していることから、特に問題は認められない。今年度は、海外発表2件、国内発表2件、学術雑誌投稿4件を予定している。また、本研究の目的を完遂するためには、個別の研究成果から全体の考察を行う必要を感じている。 現在、東日本大震災の風化が指摘されているが、現地ではもう震災直後の復興ではなく新たな発展を期待する声も聞かれている。意見の相違はエリアによって復興状況の温度差が大きいことを示している。生活がまだ十分でないのにレジャーでもないとの声も聞かれる。しかし、レジャーとして海で活動する人々や商業活動を再開する人々も多いのが現状である。このような状況から、今後の継続研究に繋がる考察も必要であり、平成26年度は遅れている質問紙調査を実施するが、質問項目に復興展望を見据えた項目を追加し、今後の継続研究に繋げられることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に実施予定であった海水浴場調査とサーフィン・ダイビングショップ調査が原発問題及び研究分担者の影響から26年度に変更を余儀なくされた。その質問紙調査関連予算が繰越となった。また、25年度から研究分担者を追加した行政と地域との関係については、今年度に再度の現地行政(自治体)への最終聞き取りを調査実施する。 平成26年度にオンライン調査及び郵送調査の実施を行う。また、行政と地域団体との関係の現地調査を行う。 内訳はオンライン調査ウエッブサイトの契約費、集計人件費、郵送費、印刷費、旅費に使用する。
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