研究課題/領域番号 |
24500713
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
波照間 永子 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (80336487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 韓国 / 沖縄 / 琉球 / 舞踊学 / 美学 / 芸術学 / 身体教育学 |
研究概要 |
今年度は、琉球舞踊と韓国舞踊の衣装や舞踊技法にみる共通点と相違点について、主に宮廷舞踊(古典舞踊)を対象に比較を行った。あわせて、琉球の宮廷舞踊の基層にある信仰や祭祀について大韓舞踊学会にて報告した。以下にその概要を記す。 1.【琉球舞踊と韓国舞踊の二部式衣装の比較】服飾学等の先行研究から、中国の元代では消滅している二部式形態が琉球と韓国に見られ、琉球では上衣および下裳の形状もあらかた変化せず残存しているが、韓国では上衣丈の短化、袖口の細化、下裳のプリーツの消滅等の「変化」を伴っていることがわかった。このような衣装の変容の違いが舞踊技法とどのようにかかわるのか、次年度以後の課題として提示した。 2.【宮廷舞踊における「袖を用いる技法」の比較】琉球舞踊では長く「垂れた袂」、とりわけ左袖の袂に、韓国舞踊では「ハンサム」と呼ばれる手を隠すための細長い袖に表現の重きを置いている。その背景にある両者の信仰、宗教、世界観を比較考察し、上記衣装の研究成果とともに、比較舞踊学会大会にて発表した。 3.【琉球舞踊の基層にある信仰と身体文化】琉球舞踊の基層にあるシャーマニズム、二ライカナイ信仰、をなり神信仰、鳥信仰などが、祭祀や舞踊の身体にいかに表象されているかを考察し、大韓舞踊学会にて報告・議論した。本成果の一部を「琉球舞踊における身体表現と信仰」と題する論考にまとめた。 *研究協力者:金チェウォン(韓国文化芸術教育振興院)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した今年度の課題は、舞踊史とジャンル、衣装、舞踊技法、伝承制度に関する概括的な比較とした。このうち、伝承制度以外は、おおむね目的を達することができた、特に舞踊技法については、宮廷舞踊の「袖を用いる技法」に焦点をあてたことで、予想以上に深く比較考察ができ、韓国側研究者とのネットワークも強固になったように感じられる。今回、達成できなかった伝承制度については、次年度以後の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、宮廷舞踊の基本技法の比較を行ってデータベース化するとともに、近代以後の日本同化政策と舞踊およびその伝承制度とのかかわりを明らかにしていきたい。具体的な課題と成果発表は次の通り予定している。 1. 7月4~5日 成均館大学校にて近代期の舞踊に関する研究会を実施し重点課題を決定する。 2.11月2日 大韓舞踊学会国際学術シンポジウムにて報告し同学会誌に公表する。 3.11月16日 成均館大学校にて近代期の舞踊に関する比較研究の成果を報告する。 4. 11月29日 比較舞踊学会大会にて近代期の舞踊-「雑踊り」(琉球)と「新舞踊」(韓国)-の調査結果を報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策にも記載した通り、次年度は7月から11月にかけて、成均館大学校舞踊学科の田銀子教授と研究協力者の金チゥウォン氏との研究会を予定している。また本共同研究の成果は、ソウルにて開催される国際学術シンポジウムおよび日韓両国の舞踊学関連学会にて報告する。したがって、今年度の残額である次年度使用額20000円は旅費に充当し琉韓ネットワークのさらなる構築にあてたい。
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