研究概要 |
電気刺激誘発によるIa-α単シナプス脊髄反射回路の変動性の実験方法を検討した。方法はヒラメ筋H反射に連続刺激で条件H反射の変動性を調べるものであった。H反射の誘発刺激強度を最大M波の20%に設定し、80~140ms間隔で連続刺激を送り、1回日に誘発されたH反射(対照)と2回日の誘発H反射(条件)を比較した。次に2回目の刺激強度をH反射の閾値レベルまで下げ、対照H反射および異なる条件H反射の変動性を比較した。異なる刺激強度による連続H反射方法は、これまでの仮説である2回日のH反射の抑制がla神経伝達物質の枯渇に加え、Ia線維から分枝回路による抑制の働きを検討することができた。 7月4日から8日までBruges, Belgiumで開催されたヨーロッパスポーツ科学会議に出席し、高齢者の運動に関した生理学的、身体機能的あるいは神経学的効果の最新情報を収集した。高齢者の運動効果に関したシンポジウムでは、運動課題における安全性と計画性の重要性に対して、プログラム参加の意欲性や継続性の問題が指摘された。またトレッドミルで前のめりを誘発する研究発表で脊髄反射および筋電図の反応を若年者と比較していた。しかし身体機能改善の仕組みの追究に至っていなかった。 本申請者のこれまでの研究成果から高齢者は若年者に比べ、直立位において下肢の末梢筋電図の働きが違い、特に腓腹筋だけでなくヒラメ筋の活動代償があった。さらに若年者は直立位においてH反射および条件H反射の変動性を低下させるのに対し高齢者は増加させた。この仕組みについて、異なる姿勢および荷重の変化を加え、条件H反射の変動性を比較したところ、若年者に比べ高齢者は高位中枢神経の活動で特に前庭系脊髄路の入力低下が大きいのではないかと仮説した。その一方で高齢者と若年者間の視覚情報の有無による条件H反射の変動性は有意差が見られなかった。
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