平成26年度は、中国、及び英国における五輪後を見通した中長期的スポーツ政策の戦略性とその実態の解明を目的に、①北京五輪後の全民健身運動、社区体育に関する資料収集と指導者養成に関する調査、②ロンドン五輪の事後評価に関する資料調査と五輪公園整備に関する調査を行った。 北京五輪後、中国のスポーツ政策は全民健身のための条件整備へとシフトしてきている。全民健身運動に関する政府の投資額は、2011年から2013年にかけて約2倍に膨らみ、週一回以上のスポーツ実施率も49.3%(北京市)とされる。こうした五輪後の場と機会の増大に合わせて、健康運動プログラムの開発と指導者養成が目下の課題となっている。指導者資格には3つランクが設けられ、初級の社区体育レベルでは一般の希望者を対象に、運動、休息、食に関するプログラムが行われていた。全民健身に向けた健康運動の内容と方法の体系化と制度化に向けた模索が続けられていた。 英国ではロンドン五輪に合わせスポーツ組織の近代化(効率的運営や専門化・高度化)が図られたが、その事後評価が学校体育、スポーツクラブのレベルでなされてきている。学校体育では、授業時間数確保への評価がある一方、競技加熱化への懸念も提出されていた。また地域スポーツクラブでは、ロンドン五輪の効果はあまり認識されていなかった。五輪の都市開発に対する評価も定まったものとはなっていなかった。ただ五輪後のスポーツ予算削減は今後の懸念材料となっており、大会終了直後からスポーツ政策研究者からは健康のためのスポーツへの転換が叫ばれていた。 中国、英国での五輪後のスポーツ政策に共通するのは、スポーツから健康への力点の変化である。その含意は、五輪を契機に拡大した場と機会等を住民にとって持続可能なものにしていくことである。それは持続可能性という観点から、五輪後の政策評価が不可避となることを意味した。
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