研究課題/領域番号 |
24500725
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山口 香 筑波大学, 体育系, 准教授 (40220256)
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研究分担者 |
橋本 佐由理 筑波大学, 体育系, 准教授 (10334054)
樋口 倫子 明海大学, 外国語学部, 講師 (70276179)
松田 基子 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (80584937)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 女子柔道 / レジリエンス / 競技力向上 / トップアスリート / 心理的競技能力 |
研究実績の概要 |
女子トップアスリートの国際競技力は向上傾向にあるが、男子に比べて科学的な研究が極めて少ない現状がある。また、多くのスポーツにおいて競技力の高さと心理的競技能力の高さが関連すること(徳永ら2000)、柔道競技においても、強化選手は心理的競技能力が高いことが報告されている(徳永ら1995)。 そこで本研究は、心理的競技能力の高さに関連する要因に着目し、1.自己価値感、2.自己抑制型行動特性、3.対人依存型行動特性、などの側面をとらえ、自己イメージとして操作的定義をし、スポーツおよび柔道と関連の深いと思われる自己イメージとレジリエンス、また、レジリエンスとスポーツ競技特性不安や心理的競技能力との関連を検討することとした。 これまでの研究において、心理的競技能力の高さに影響を与えていたのは、レジリエンスの高さとスポーツ競技特性不安の低さであった。また、レジリエンスの高さは、自己価値観の高さと自己抑制度の低さ、対人依存度の低さから影響を受けていた。自己を肯定的に捉え、自分の気持ちや考えを表出することができるなどの自己報酬型の自己イメージがレジリエンスの高さを支え、スポーツ競技特性不安を抑え、心理的競技能力を高めるともいえる。また、競技成績の違いによる差異についても検討を加えた。日本の生徒は自己肯定感や自尊感情が低いことが報告されている((財)一ツ橋文芸教育振興会,(財)日本青少年研究所)が、これはスポーツ選手もあてはまると考え、コーチが行っている指導や声かけが選手の競技成績によっても違いが生じ、それによって自己決定や自分の意見を表出できるなどといった自己報酬型のイメージに影響がでると考えた。 今後は、選手の自己イメージやレジリエンスを高める介入研究を実施し、効果的なコーチングのあり方について提言できるよう研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度は25年度に続いて、全日本学生柔道優勝大会に出場した大学の男子部員および女子部員1、2年生を対象に質問紙調査を行った。自己イメージの良さがレジリエンスの高さに影響を与え、レジリエンスの高さがスポーツ競技特性不安を軽減し、心理的競技能力を高めるという仮説モデルを共分散構造分析により検討した。また、競技力と心理的競技能力や自己イメージ、レジリエンスとの関連を検討しようと試みたが、柔道競技においては、記録系の種目のような数値化が困難なために、競技力を客観的に評価することが困難であった。この点が解決できなかったことが、競技力と心理的競技能力などの関連を分析するには至らなかった原因である。 心理的競技能力と自己イメージやレジリエンスとの関連を検討することで競技力向上への貢献が可能になるのではないかと考え、仮説モデルの構築と前向き調査によりモデルを検証した。その結果、心理的競技能力の向上に関連する要因がいくつか見出された。心理的競技能力の高さに影響を与えていたのは、レジリエンスの高さとスポーツ競技特性不安の高さであり、レジリエンスの高さは、自己価値感の高さと自己抑制度の低さ、対人依存度の低さから影響を受けていた。このことから柔道のコーチングを考えた場合には、コーチが選手の意見や考えを押さえつけるのではなく、十分に引き出しつつ伸ばしていくことが望ましいと考えられる。 今年度に行った調査の集計、分析結果については日本体育学会において3つのテーマについて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、心理的競技能力と競技力との関連をみるために、柔道の競技力を測る尺度について検討を進め、これらの関連についてさらに分析を進める。 昨年度まで研究協力していただいた大学の中から数校を選び、希望者を募って、自己イメージやレジリエンスを高めるための介入研究を実施し、その効果について検証を行う。 昨年度までの調査によって、レジリエンスや自己イメージ、心理的競技能力を高めるには、指導者の支援が重要であることが示唆されたことから、研究協力を要請している大学のコーチや指導者のうち、支援法の習得を希望するスタッフ若干名に対して支援者の教育を行い、養成する予定である。そして、養成した支援者が、女子トップアスリートに対して個別介入を行い、介入前後の調査により、その効果を検証する。 支援法の普及に向けてマニュアルを作成し、学会発表と論文投稿を行う。報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙調査を実施した対象者の中から希望者を募っての介入調査の実施ができなかった。このことにより未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
質問紙調査を行った対象者の中から介入研究の対象者を募り、数回にわたって介入調査を実施する。そのための旅費、分析等の謝金に充てる。
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