研究課題/領域番号 |
24500726
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小池 関也 筑波大学, 体育系, 准教授 (50272670)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 筋張力 / 筋収縮様式 / 動力学的貢献 / 走動作 |
研究概要 |
今年度は,走動作支持期における下肢筋張力の動作への変換の様相について定量化する手法,ならびに各筋群の張力発揮負担度を定量化する指標を提案した. そして,これらの手法を用いて,踵接地タイプのランナーの定速走動作における支持脚筋群を対象とした分析を行った結果,1)各筋群の張力発揮能は,短縮性収縮局面に比べて伸張性収縮局面の方が大きいのに対して,張力発揮能に対する発揮張力量の比である発揮負担度は伸張性収縮局面の方が小さいこと,2)動力学的変換率は,筋群によらず,水平方向に比べて鉛直方向の方が大きいこと,3)身体重心の速度変化に対する貢献が大きな大腿四頭筋,下腿三頭筋,ならびに足関節背屈筋群では,伸張性収縮による筋張力が,特に効果的に鉛直上方への身体慣性力に変換されることなどが明らかとなった. さらに,張力発揮能と動力学的変換率からみた各筋群別の特徴として,1)殿筋群については,筋張力の発揮負担度は大きいが,身体重心の並進運動において動力学的変換率が非常に小さいことから,張力発揮能に対する余裕が少なく,発揮された筋張力も身体の制動および支持に対しては効果的に変換されない筋群であること,2)大腿四頭筋(広筋群,大腿直筋)についいては,両筋群の張力発揮負担度には差異がみられないが,大腿直筋よりも広筋群の方が伸張性収縮時の筋張力が身体支持に対してより効果的に変換されること,3)下腿三頭筋(ヒラメ筋,腓腹筋)については,水平方向は腓腹筋,鉛直方向はヒラメ筋の動力学的変換率が大きいことから,腓腹筋は張力が推進に対して効果的に変換され,ヒラメ筋は張力が身体支持に対して効果的に変換される特徴を有する.また,腓腹筋に比べて,ヒラメ筋は張力発揮負担度が小さく,張力発揮能における伸張性収縮時と短縮性収縮時との差異が他の筋群に比べて大きな筋であること,などが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定速走動作を対象として,全身の運動方程式,および筋腱複合体特性式を連立することにより,身体の推進および支持に対する支持脚筋群の貢献を,筋張力の発揮様式別に定量化することを実現した.その際,下肢筋張力の動作への変換の様相について定量化するとともに各筋群の張力発揮負担度を定量化する指標を提案することにより,各筋群の動的な特徴を明らかにしている.
|
今後の研究の推進方策 |
運動依存項の発生要因を考慮した筋の動力学的貢献の定量化を行う. まず,スウィング動作における上肢筋張力の推定について,上肢各筋のモデル化を行った後に,これまでの研究にて取得しているテニスサーブおよび野球打撃動作のデータから,筋骨格モデリングソフトウェアによって上肢各筋の筋張力を推定する.その際,筋張力については,その収縮様式別に分類する. つぎに,運動依存項の発生要因となる上肢筋張力の貢献の算出について,申請者が既に提案している運動依存項の発生要因を考慮した関節トルクの貢献の算出式を筋張力の貢献の算出式へと拡張することによって,運動依存項を考慮した上肢筋張力の貢献を算出可能とする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
スウィング動作における運動依存項の発生要因を考慮した筋の動力学的貢献の定量化を行う.その際,筋張力の推定のために,初年度と同様に筋骨格モデリングソフトウェアを使用するため,そのライセンス使用料を主な支出項目とする.
|