研究課題/領域番号 |
24500728
|
研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
石塚 和重 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (40350912)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 運動 / Nirs / 前頭葉 / 筋 / 脳性麻痺者 / 健常者 / 筋パワー負荷試験 / 心肺運動負荷試験 |
研究実績の概要 |
平成26年度は運動負荷試験を筋パワー負荷及び心肺負荷試験を用いて検討した。筋パワー負荷試験は①下肢等速性運動角速度180°/sec②下肢等速性運動加速度60°/sec③下肢等尺性運動④上肢等速性運動角速度180°/sec⑤上肢等速性運動角速度60°/sec⑥上肢等尺性運動とした。被験者は健常成人10名(男性6名、女性4名、平均年齢23.5歳)脳性麻痺者5名(男性5名、平均年齢36.5歳)、心肺負荷試験では健常者5名(男性2名、女性3名、平均年齢22.6歳)、脳性麻痺者5名(男性5名、平均年齢36.5歳)であった。 具体的測定方法は、筋パワー負荷試験として、被験者は多用途筋機能測定装置(BIODEXシステム4)とSpectratech OEG-16を使用し、前頭部と上腕二頭筋、内側広筋の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)を測定した。また、心肺運動負荷試験は自転車エルゴメーターを使用し、1分間に50~60rpm(回転)の速度を維持した状態で、徐々に負荷をかけて漕ぎ、運動前、運動中、運動後のoxy-Hbとdeoxy-Hbについて測定した。 結果として筋パワー負荷試験では健常成人では運動負荷中において前頭部ではoxy-Hbは増加し、deoxy-Hbは減少、筋では逆にoxy-Hbは減少し、deoxy-Hbは増加するという一定の傾向を示したが、脳性麻痺者では一定の傾向は認められなかった。次に、心肺運動負荷試験では健常成人では、前頭部で運動開始とともにoxy-Hb の増加、deoxy-Hb の減少がみられた。筋においては運動開始とともに oxy-Hb の低下、deoxy-Hb の増加がみられた。脳性麻痺者も同様の傾向を示したが回復過程に相違が認められた。 本研究は脳性麻痺者の運動の異常性と疲労度を解明するために重要で意義のある研究である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究での脳性麻痺者の人数はまだ不十分であり、今後さらに被験者数を増やして脳性麻痺者の運動と脳との関係を健常者と比較検討して解明していく必要がある。現時点では健常者と脳性麻痺者の相違について明らかにすることは不十分である。母集団の数を増やして証明していくことが重要になってくると考えている。 以上のことから、上記のとおり達成度を評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
脳性麻痺者は脳障害による運動の異常性が特徴である。また、脳性麻痺者は疲労しやすいといわれている。運動は脳の働きに大きく影響されている。さらに、脳障害が運動を作動する筋肉にどのような影響を及ぼしているのかを解明することが脳性麻痺者の運動の異常性と疲労度を解明する糸口となる可能性が高い。 脳性麻痺者の科学的トレーニングに関する研究として、2000年から研究を開始し、脳性麻痺の筋力トレーニングとしての基礎研究としての筋断面積、筋力、動作速度について検討してきた。2005年には脳性麻痺者陸上短距離選手の記録向上を目的として、無酸素性能力としてのミドルパワーの研究を行い、100m、200mの記録を向上させるにはミドルパワーの改善が重要であるという結論がでた。2011年からは脳性麻痺のタイプ別筋力トレーニングについて痙直型脳性麻痺者とアテトーゼ型脳性麻痺者の筋力と筋断面積、動作速度について検討した。その結果、痙直型脳性麻痺者とアテトーゼ型脳性麻痺者とも筋力、筋断面積、動作速度にそれぞれ相互関係があることが立証された。しかし、脳性麻痺は脳の障害を原因とした運動障害である。運動が脳性麻痺者の脳機能及び筋代謝に及ぼす研究をすることは、脳性麻痺の病態を知る上で重要である。一方、脳性麻痺のパフォーマンスを向上させるもうひとつの要素として持久力の要素が重要である。今後の研究は運動が脳性麻痺者の脳機能及び筋代謝に及ぼす影響について、運動負荷と疲労度の視点から検討していく必要がある。 平成27年度は運動が脳性麻痺者の脳機能及び筋代謝に及ぼす影響について、筋パワー負荷試験及び心肺運動負荷試験における脳性麻痺者の特徴を明らかにしていくために被験者数を増やして更に検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は被験者として予定していた脳性麻痺者の多くが体調不良や仕事の都合で研究対象とできなかった。このことにより、データ数が不十分となり学会等に発表できなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
主に脳性麻痺者の被験者に対する旅費及び謝金、そして、日本障害者スポーツ学会、医療体育研究会、理学療法学関係学会等での発表に必要な経費に次年度使用額を使用する予定である。
|